【保存版】社会的インパクトを担う「ソーシャルビジネスモデル事典」

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【保存版】社会的インパクトを担う「ソーシャルビジネスモデル事典」

こんにちは、外資系セールスから転職→現在はベンチャー企業にて起業家を支援している冨田到(@ItaruTomita9779)です。

最近はSDGs経営や社会起業を志す方が増えていると感じますし、そういった起業のご相談のケースも多く存在します。

他方で、悪いことではないですが、「社会貢献をしたい」という、個人的な思いが先行してしまい、市場のニーズや継続性に気づかない方が多いのも事実です。

また一方で、ビジネスであれば、社会課題を何でも解決できるわけではないこともまた事実です。

しかし、資本主義のルールの中で、社会的なインパクトを出す場合には、活動の資金を充足するソーシャルビジネスを考えるのは大事な視点です。

こちらの記事では、ソーシャルビジネスのビジネスモデルを構築する際に気をつける3つのポイントと、実際のビジネスモデルの4つの分類を「ソーシャルビジネスモデル事典」として一挙にご紹介します。

*こちらの記事は私が趣味的にやっている、ソーシャルビジネスのビジネスモデルの分析に伴って、適宜更新していく事典的記事にしたいと思っております。

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ソーシャルビジネスを始める前の3つのポイント

ソーシャルビジネスは、社会課題をビジネスを通じて継続的に解決する仕組みを目指し、収益化を通して、その資本を再投下し、社会的なインパクトを最大化します。

NPO・NGOとどちらが優れているか、ではなく、社会課題の根本的な解決を目指す手法の違いがあるだけなので、構造的な解決のために双方のアプローチがあるのは良いことです。

そのソーシャルビジネスを始めるときに、ビジネスと社会貢献の2つの観点、すなわち論語(道徳性)と算盤(収益性)が求められます。

下記に、ソーシャルビジネスを始める方々が忘れがちですが、重要なポイントを列挙します。

  1. どの受益者に、どのような社会的なインパクトをもたらしたいか?
  2. 顧客は誰で、どんな課題があるのか、どのように価値提供するのか?
  3. 利益と社会的インパクトのバランスを取るために、どのようなサービスを提供するのか?

*社会的インパクトをしっかり計測し、問題解決に貢献する活動を行っていく効果的な利他主義についてもご参考になりますので、下記を御覧ください。

受益者と社会的インパクト

まず大事なポイントが、社会的なインパクトがもたらされる対象者=受益者を具体化することです。

意外と、起業当初だと、この誰に貢献したいのか?が曖昧で、大きい社会課題に目が行ってしまっていることが多いです。

ニュースで聞いたような二次情報ではなく、あなたの興味のある社会課題に紐づく、具体的な受益者を一次情報から特定しましょう。

できるだけ、その当人に会ったことがあったり、自分の原体験に紐付いていると、具体的な顧客像と課題が理解できます。

顧客の課題と提供価値

次に大事なポイントが受益者と顧客というアクターが、ソーシャルビジネスには同時存在する点です。

受益者は多くの場合、社会的な不利益を被る、社会的弱者であり、顧客は社会的企業や受益者の活動で便益を得るアクター(企業だったり、消費者だったり)です。

両者は同じ人物であることや、収益性が難しい場合は違うケースもあります。

これは、AirbnbやUberのようにいわゆるツーサイドマーケットのビジネスに似ており、価値を届ける先が複数存在するのがソーシャルビジネスの難しさです。

つまり、お金を払える人間と、社会的な課題を抱える人間が同一ではないということで、双方に価値を提供する必要があるのです。

構造的暴力と社会的インパクト

そして、受益者と、顧客の特定ができたら、その社会課題が発生している構造を捉えた上で、社会インパクトを効果的に回転するサービスとビジネスモデルを構築する必要があります。

「構造」という言葉を少しピックアップしますが、構造的暴力という言葉が平和学という学問の分野では概念として存在します。

例えば、途上国の貧困の要因が教育の不足であったり、栄養資源の不足、疾病の問題、開発の問題など、多岐に渡るケースが有り、構造的に「貧困=暴力」が構成されているのです。

つまり、多くの社会課題は複合的な要因が絡まって、その問題が表出しているので、その構造的暴力を理解する必要があります。

そして、その構造のどこを解決したら社会的なインパクトをもたらせるのか、継続的に資金が投入できるビジネスモデルを構築できるのか、考えなければなりません。

社会課題によっては、資金調達の難易度が高く、ビジネスでは難しいケースもありますが、非営利セクターとも協力しながら、社会インパクトを導き出す視点が必要になります。

非営利セクターとの接点の持ち方として、プロボノという社会人のビジネススキルを生かしてNPO・NGOに貢献する働き方もありますので、下記の記事をご参考下さい。

このように、ソーシャルビジネスのビジネスモデルを考える前にも、ビジネスの基礎と社会貢献のハイブリッドが求められますので、気をつけたいポイントですね。

ソーシャルビジネスのビジネスモデルの4つの分類

さて、上記のソーシャルビジネスの注意点を踏まえた上で、ソーシャルビジネスのビジネスモデルの4つの分類を分析してみましょう。

登場する主体は、下記の3つを軸に考えます。

  • 社会的企業(製品・サービスを提供する。)
  • 受益者(社会的インパクトを受け取る。社会的な弱者など。)
  • 顧客(社会的企業の提供する価値を受け取る。企業、一般消費者、非営利団体など。)

そして、上記の主体の絡み方によって、ビジネスモデルを分類し、実際に私の好きなビジネスモデルも具体例としてご紹介・追記していきます。

  1. 製品・サービス提供タイプ:受益者が顧客であるパターンで、支払い能力が受益者にある。
    • 社会的企業が提供する製品・サービスそれ自体に社会的価値があり、社会的インパクトと収益を同時に上げる。
  2. 解決策提供タイプ:受益者が顧客であるパターンで、支払い能力が受益者に(少)ない。
    • 受益者と一緒に製品・サービスを開発し、社会的企業がその手数料や支払いを受け取る。
  3. 仲介タイプ:受益者と顧客が分かれているパターンで、支払い能力を顧客に求める。
    • 受益者と顧客をマッチングさせ、社会的企業が仲介手数料を受け取り、受益者に製品・サービス開発の機会を提供する。
  4. 相互補完タイプ:受益者と顧客が独立してそれぞれ存在するパターンで、支払い能力を顧客や一般市民の寄付金に求める。
    • 受益者には問題解決のための資本を提供し、顧客にはサービス・情報提供を通じて収益を上げ、受益者に還流させる。

こちらのビジネスモデルの分類については、下記のPioneerPostも参考になりますので、ぜひ御覧ください。

製品・サービス直接提供タイプ

製品・サービス直接提供タイプ:受益者が顧客であるパターンで、支払い能力が受益者にある。

社会的企業が提供する製品・サービスそれ自体に社会的価値があり、社会的インパクトと収益を同時に上げる。

まずは1つ目ですが、こちらは、製品やサービスそれ自体が、社会的な課題の解決を受益者であり顧客でもある社会的な弱者に貢献するものです。

具体的には、安価な製品や最低品質のプロダクトを貧困層でも買えるようもので、農業製品や、衛生・生理用品のようなBOPビジネスに近いものです。

こちらは販売量に比例して、社会的インパクトも増加しますので、資本主義の原理とも喧嘩しづらい、相性のよいビジネスモデルになります。

途上国でよく見られるモデルですが、先進国では経済成長が止まってきているので、難しいかもしれないですね。

下記に具体例をご参考いただける記事を記載させていただきます。

製品・サービス直接提供タイプの具体例

Pachamaは、森林所有者に対して、二酸化炭素削減量を定量的に測定することを可能とします。

企業は国家的に二酸化炭素を削減しなければいけない場合は、その減らせない分を、森林所有者にお金を払うことで、森林を所有したり借りたりすることで、相殺します。

いわゆるカーボンオフセットになりますが、これを一つの民間企業が仲立ちになり、政府や大企業を顧客にとり、地球温暖化の解決を目指す、面白いソーシャルビジネスになります。

こちらのSINAI Technologiesは、同じくカーボン・オフセットを取り扱うスタートアップですが、炭素削減のための予算や事業計画をコンサルティングするような会社です。

Waste4Changeは、途上国に多い、廃棄物の埋め立て・処理問題を取り扱うインドネシアのスタートアップです。

民間企業・政府・市民一体となって、廃棄物管理システムを展開しています。顧客は政府・自治体でしょうか。

こちらのd.lightは、未電化地域における太陽光を利用した電気供給プロダクトサービスです。

こちらはZero Mass Waterは、水不足に対する面白い技術を持つ注目のスタートアップになります。

下記のAssoConnectは、フランスのスタートアップで、非営利組織向けの会員や寄付、経理などを一貫して管理するSaaSです。

日本だと、大阪のベンチャーのリタワークス社のCongrantが近しいサービスかと思います。

解決策直接提供タイプ

解決策直接提供タイプ:受益者が顧客であるパターンで、支払い能力が受益者に(少)ない。

受益者と一緒に製品・サービスを開発し、社会的企業がその手数料や支払いを受け取る。

2つ目のこちらは、受益者であり顧客でもある社会的な弱者に対して、トレーニングを提供したり、技術を提供したり、お金を渡すことで、彼らの自立をサポートします。

具体的には、少額融資であるマイクロファイナンスや、農業技術コンサルティングで事業主として自立させたり、社会的企業がフェアトレードの経営・認証を共営し、マーケティングサポートをしたりします。

社会的な弱者を事業主として、貧困から抜け出させる一方で、経済的にも独立を促し、そちらの利益から社会的企業の資金源を調達していくモデルですね。

貧困を例にして考えるのであれば、衣食住に困っている絶対的貧困レベルではなく、一定程度の生活ができている相対的貧困クラスであれば、一定の効果はありそうです。

絶対的貧困レベルになると、労働力という資本すら危ういケースが多いので、もうひと工夫が必要ですね。

下記に具体例をご参考いただける記事を記載させていただきます。

解決策直接提供タイプの具体例

下記の五常・アンド・カンパニーはFintech×マイクロファイナンスの好例です。

五常・アンド・カンパニーは、民間の世界銀行を目指し、世界中の人達に平等な金融アクセスを目指しています。

途上国の信頼できる経営者・パートナーを発見し、マイクロファイナンスのメソッドをその国の文化に合わせて提供し、会社経営と事業経営をサポートしていきます。

これを、世界中の国で拡大しまくり、民間版の世界銀行を目指すという、なかなか壮大なスタートアップです。

トレーニングや研修によって社会的に包摂されていない弱者をコミュニティ復帰させるソーシャルビジネスは「Community Impact Initiative CIC」も参考になりそうです。

特に建築現場におけるスキルアップをサポートし、犯罪などで復帰が難しい人々を再包摂します。

再包摂の場所がないとまた犯罪に手を染めるケースもあるので、重要な取り組みかと思います。

仲介タイプ

仲介タイプ:受益者と顧客が分かれているパターンで、支払い能力を顧客に求める。

受益者と顧客をマッチングさせ、社会的企業が仲介手数料を受け取り、受益者に製品・サービス開発の機会を提供する。

3つ目のこちらは、受益者である社会的な弱者と、顧客をマッチングさせ、顧客には紹介の目利きや探索の労力を、社会的企業が負担して価値を提供します。

顧客が企業であるケースでは、CSR的な活動やサービスの供給源として受益者と共存し、受益者に支払いを行います。

また、社会的企業も調整弁となることで、顧客から紹介料をもらったり、受益者に直接のサポートを与えたりします。

具体的には、エシカル消費に貢献する人道的な生産材・原材料のサプライチェーンの紹介や、人材教育を行った社会的な弱者の人材紹介、クラウドファンディングプラットフォームや、地域住民の雇用創出コンサルティングなど、です。

こちらのモデルと次のモデルから顧客と受益者が分かれて、関係者が増えるので、提供価値はその分増えて、難易度が高くなってきます。

マッチングする顧客と、受益者の双方のニーズと強みを理解することは、少し考えただけでも労力は2倍です。

しかし、社会的な弱者である受益者に資金源を依存しないビジネスモデルの構築の可能性はあります。

また、マッチング・仲介の技術だけではなく、競合優位性を高めるためにウェブサービスを検討することもありえます。

その場合、UI・UXの向上、データの利活用など、SaaSへの発展も検討できる意味では展開性が高いビジネスモデルです。

下記に具体例をご参考いただける記事を記載させていただきます。

仲介タイプの具体例

下記のArt for Redemptionは、受刑者のアートと、そのアートがほしい人をマッチングさせていくサービスになります。

アメリカは受刑者の数が非常に多く、社会的包摂・経済的損失の意味で、問題になっているので、非常に特徴的なソリューションサービスです。

kivaは、個人少額融資のマッチングプラットフォームで、マイクロファイナンスや非営利セクター、起業家向けに資金調達の機会を実現していきます。

日本で言うなら、クラウドファンディング系のサービスが近いかもしれないですが、ここまで100%社会性を追求してあえてリターンを求めず、それを実現しているサービスはなかなかないですね。

私がプロボノをしているスタートアップのサービス「Actocoin」もこちらのビジネスモデルに近いですね。

相互補完タイプ

相互補完タイプ:受益者と顧客が独立してそれぞれ存在するパターンで、支払い能力を顧客や一般市民の寄付金に求める。

受益者には問題解決のための資本・システムを提供し、顧客にはサービス・情報提供を通じて収益を上げ、受益者に還流させる。

4つ目のこちらは、社会的企業が、独立して存在する受益者と顧客に対して、顧客企業や消費者を資金調達源にして、受益者に貢献します。

また、受益者自体が、顧客に対する有益な情報を持つこともあるので、一面的には経済的価値がないと思われるものでも、視点を変えて経済的価値をもたせることもあります。

具体的には、商業的な教育サービスに社会貢献の資金源のための価格を上乗せして、そちらの資金源をもとに貧困層への教育サービス展開したり、貧困層向けの診療所を経営するために薬局チェーンを経営したり、ですね。

他にも、消費者から寄付金を募ったり、受益者から社会課題データを抽出して顧客に販売したり、社会的企業自体が社会的弱者を雇用して、トレーニングを行い、企業に人材紹介したり、など、多様なモデルが考えられます。

ちなみに、社会的弱者であればあるほど、例えば貧困度合いが高ければ高いほど、経済原理ではなく政治的施策によって救済されるべきですが、それがなされていない場合があります。

ソーシャルビジネスにおいて、そういった問題を扱う際には、資金をどこから調達するかは社会インパクトを出すために大事な問題です。

なお、寄付金に頼ることを嫌う方もいらっしゃるかもしれませんが、寄付金は立派なサブスクリプションになり得ますし、事業収入と助成・補助金との組み合わせも大事になります。

相互補完タイプではこのようなケースが多く、社会的弱者=受益者である人々の利害関係者を洗い出し、資金調達先を探すことが大事になります。

こちらのビジネスモデルでは、より構造的暴力の複雑性が増しますので、ソーシャルセクターや政治的連携なども視野に入れて、自社だけで頑張らないことも気をつけたいポイントです。

下記に具体例をご参考いただける記事を記載させていただきます。

相互補完タイプの具体例

こちらのHumaniumは、政府にとって無価値だった材料を、社会的価値を追加して、うまく資金調達した好例です。

こちらのGlobal Mobility Serviceは、IoT×Fintechの技術で、アジアの貧困を雇用の力で多様なアクターを巻き込み解決に取り組むスタートアップです。

また、下記のBeluは再生プラスチック・低カーボンで作り上げたペットボトルウォーターを売る会社です。

そこまでならよくあると思いますが、利益の100%をWaterAidという水の平等を実現する非営利団体に提供しているなかなかクレイジーなソーシャルビジネスです。

売上をきっちり上げて、寄付金頼みではない活動をしており、おそらく再生産のコストを差異引いた、100%の利益提供するという圧倒的な社会性が競合優位なのでしょう。

ソーシャルビジネスというと、ボーダーレス・ジャパンにも言及しないわけには行きません。

こちらは、ソーシャルビジネスの集合体なので、本体のビジネスモデルと、関連会社のビジネスモデルで、分類は分かれるでしょう。

本体について、あえて言及すると、ボーダレス・ジャパンは、「恩送り」というシステムで、会社に属する先輩社会起業家が、後続の社会起業家に出資して、そして育った社会起業家がまた皇族に出資するシステムがあります。

また、出資するだけではなく、代表の田口さん含めて、優秀な起業家が、後続の起業家の事業にハンズオンで伴走することも特徴で、一つの経済圏=エコシステムを作っているのが特徴で、まさに相互補完型ですね。

ソーシャルビジネスしかやらない、ソーシャルビジネスのプラットフォーム、なかなかに素晴らしい企業です。

ソーシャルビジネスの論語と算盤の両立

ソーシャルビジネスや社会起業家というと、偽善的に聞こえてしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、三方良しに代表されるように、もともと社会課題とビジネスは本来不可分です。

他方で、資本主義のルールでは、金の力は絶大で、社会的活動にも、資本主義を革命しない限りは、資金は絶対に必要です。

であるのであれば、社会課題に向き合うと同時に、ビジネス的に資金調達できる部分を探すことも、受益者にとっては、社会的インパクトが大きいので、ますます論語と算盤の両立が求められます。

ソーシャルセクターとビジネスセクターのより一層のエコシステムの形成は、日本では大事な課題になりますので、皆様も探求されてみても、面白いのではないでしょうか。

ご参考までに、PeaceTechというXtech領域も、海外では出現しているようで、ぜひ下記の記事で海外事例を見てみてください。

*alternaのソーシャルビジネス大図鑑も参考になります。ビジネスもいくつか載っていますが、NPOよりではあります。

ソーシャルビジネス勉強
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