【京都プロボノ感想】地道なヒアリングにこそ、問題解決のヒントがある。
こんにちは、外資系セールスから転職→現在はベンチャー企業にて起業家を支援している冨田到(@ItaruTomita9779)です。
前回(気候ネットワーク プロボノワーク:問題紹介編)の続きです。
私は外資系メーカーに勤めつつもサービスグラントという団体で、プロボノという社会人ボランティアに従事しております。
今回は私が現在参加しているプロボノの団体である気候ネットワークさんの活動を紹介を通して、プロボノの体験談・感想を紹介していきます。
まずは、気候ネットワークさんの課題を再確認しましょう。
プロボノへの依頼:気候ネットワークの抱える課題について
地球温暖化防止のために活動する全国の市民・環境NGO/NPOのネットワークとして、多くの組織・セクターと交流・連携しながら活動を続けていますが、団体のミッションや気候変動に関する課題は、環境問題に普段接していない方には身近なものでなく、理解されることが難しいという一面もあります。
そこで、社会的な背景を踏まえて、団体のミッションや解決に向けて取り組んでいる活動をわかりやすく伝えるパンフレットを制作します。
プロボノ成功のコツ:支援先の課題を整理する。
前回の最後に、下記のポイントを明記しています。
・団体の依頼を噛み砕いて理解する。
・プロボノチームで、疑問点を洗い出し、全員の認識を合わせる。
⇒依頼に対する成果物を再設定し、ゴールまでに何をすべきか、全員で共有する。
この記述のように、我々の今回のプロボノチームでは、気候ネットワークさんとの顔合わせミーティングで、「なぜパンフレットの依頼になったのか?」ということを確認し合いました。
その結論は、団体の活動を応援してくれる人を確保し、寄付や会員に積極的になってもらいたいとのことが、今回のパンフレットの依頼の目的だったそうです。
国内でトップクラスのNGOではありますが、マネタイズには困っているようです。
よかったら、皆さんも寄付してみてはいかがでしょうか。
国会や国連での気候変動への政策提言がより活発になり、異常気象を防ぐ原動力になります。
成功のコツ:プロボノによる成果物の方向性を検証する。
ここで、まずプロボノにおける課題設定がそもそも合っているのか?という点を考えないといけません。
そもそもの課題設定が誤っているのであれば、プロボノが協力して出来上がったものが、全く効果を持たないものになってしまうからです。
こちらを、今回はゴールデンサークルという思考法のテクニックを使って分析していきます。
ゴールデンサークルとは、なぜ?から課題の解決策の正解を探し出す思考法です。
実際に、気候ネットワークさんのパンフレットの課題を例にゴールデンサークルを使っていきましょう。
ゴールデンサークルのコツ①WHY:達成したい目的は何か?
気候ネットワークさんは、寄付を増やすことで何を得たいのか?
それは、気候ネットワークの気候変動の抑制の活動を効果的にしたい、という団体のミッションを達成したいからです。
そのために資金や会員を増やしたいという目的があり、そのために気候ネットワークさんの情報をより広く伝えたいのです。
ゴールデンサークルのコツ②HOW:どのように伝えるのが正しいのか?
次に、団体の情報をどのように伝えるべきかを考える必要があります。
目的を達成するための、HOW=手段を考えるのです。
ゴールデンサークルのコツ③WHAT:何で伝えるべきなのか?
目的を会員を増やしたいと定義しました。
そして会員になってもらうための情報をどのように伝達するのか?という手段を選ぶ必要があります。
最後に、その情報を伝えるために、実際に作る成果物として、パンフレットを選ぶ必然性を考えるのです。
我々のチームでも、最初に方向性を誤らないために、こちらの確認を着実に行いました。
また、プロボノでは、予算やスケジュールや支援期間を考慮し、1つのプロジェクトでできる範囲を明確にする必要もあります。
さもないと、期間内に終わらない、予算でできる範囲を超える、等、キャパオーバーに陥り、プロジェクトが逆に中途半端になります。
ここの見極めは、ビジネスでもマネージャーがプロジェクトのゴールをしっかり描く必要があることと同じで、プロボノでも大変重要なのです。
(チームワークなので、歯がゆい場面もあるかもしれません。逆にチームワーク次第で、可能性も無限大ですが!)
①②③を検証してみると、①に関しては、世界的に気候変動が問題になっているので、それを解決したいという願いは、方向性として間違っていません。
②に関しては、団体はセミナーをよく開いているので、そちらで手渡しをしたり、配布をしたりするという意味で、適切な情報を伝えるための媒体がパンフレットである、という結論に成りました。
③については、団体の強みと弱みを団体関係者(ステークホルダー)からヒアリングを行い、確かめていきました。
価値ある成果物を作るためには、地道なヒアリングが必須
ゴールデンサークルのコツ③WHAT:パンフレットの内容については、団体の提供できる価値にもよって、変わってきます。
強みとその強みが欲しい人のマッチングが間違っていれば、その施策はまったく当たりませんよね?
チョコが嫌いな人に、超最高級のチョコレートをプレゼントしても、梨の礫でしょう。
ここのヒアリングはチーム全員参加で丁寧行いました。
・専門家(大学教授、新聞記者、競合NGO代表
・学生(インターン生)
・一般人(セミナー参加者)
ターゲット候補を選定し、気候ネットワークの強み・弱み・現状受け取っている「価値」を聞き取りました。
プロボノマーケティング調査:気候ネットワークの強み
やはり「強み」や「価値」は、国会での提言をするぐらいですから、気候変動という専門性の高さ、研究情報レベルの高さが見受けられます。
その強みや価値に応じて、パンフレットの内容を変えていく必要があるようです。
プロボノマーケティング調査:強みから適切なターゲットを考える。
他方で、寄付のしやすさも、ターゲットによって違うことがわかりました。
環境社会学では、知識を得て、関心を持ち、行動に移るというフレームワークがあります。
学生は、団体への認知を高めてから。専門家や関心のある市民は、関心が高いので、行動=寄付に移りやすいという特徴が見て取れました。
ヒアリングには1ヶ月間の間に、チームメンバーの空いている土日などの時間を使って地道に行いました。
普段仕事で接しない方々から多様な意見を聞ける経験は貴重です。
また、団体にとっても、外部からの意見を聞けることは大変貴重なのです。
お互いが、インターネットを通じて、異なる会社から1つのコミュニティに集まる、ワーク・シフトの1つの形なのでしょう。
成果物を作る事前準備がプロボノの成否に関わる、という感想。
今後は、このターゲットに対して、適切なパンフレットを作成していくフェーズに移ります。
このように、成果物を作る前に、その方向性が間違っていないか、確認することが効果的な成果物を作るために必要なことなのです。
急がば回れ、とはまさにこのことですね。
パンフレット作成は、チームのデザイナーや構成担当の方と、要素を決めていく作業になります。
団体のニーズを探りながら、プロダクトを作成していく、非常に重要なフェーズです。
そちらについては、また次回。
未来の働き方は、プロボノに近い?そんなことを示唆する本をご紹介します。
ワーク・シフト ─孤独と貧困から自由になる働き方の未来図<2025>(リンダ・グラットンさん著)
ワーク・シフト ─孤独と貧困から自由になる働き方の未来図<2025>
ライフ・シフト(人生100年時代)で有名なリンダ・グラットン先生の新しい本です。
これからの働き方は、SNS(インターネット)で、異なるコミュニティから人が集まる。
そして、仕事を共創していく未来を書いています。
近年の副業が流行ってきている背景を読み解く、また今後のあなたのキャリア感に一石と投じる本になるでしょう。
プロボノの体験も、来るべき未来に対して、経験値になる可能性は高いですね。
内容紹介
*下流民か、自由民か。地球規模で人生は二極分化する*
2025年、私たちはどんなふうに働いているだろうか?
ロンドン・ビジネススクールを中心とした、「働き方コンソーシアム」による、
世界規模の研究が生々しく描き出す2025年のに働く人の日常。
「漫然と迎える未来」には孤独で貧困な人生が待ち受け、
「主体的に築く未来」には自由で創造的な人生がある。
どちらの人生になるかは、〈ワーク・シフト〉できるか否かにかかっている。働き方が変わる! 〈5つのトレンド〉
●テクノロジーの発展
●グローバル化
●人口構成の変化と長寿化
●個人、家族、社会の変化
●エネルギーと環境問題働き方を変える! 〈3つのシフト〉
●ゼネラリスト→連続スペシャリスト
●孤独な競争→みんなでイノベーション
●金儲けと消費→価値ある経験「食えるだけの仕事」から意味を感じる仕事へ、
忙しいだけの仕事から価値ある経験としての仕事へ、
勝つための仕事からともに生きるための仕事へ。
覚悟を持って選べば、未来は変えられる。著者について
◆著者紹介
リンダ・グラットン(Lynda Gratton)
ロンドン・ビジネススクール教授。
経営組織論の世界的権威で、英タイムズ紙の選ぶ「世界のトップビジネス思想家15人」のひとり。
ファイナンシャルタイムズでは「今後10年で未来に最もインパクトを与えるビジネス理論家」と賞され、
英エコノミスト誌の「仕事の未来を予測する識者トップ200人」に名を連ねる。
組織におけるイノベーションを促進するスポッツムーブメントの創始者。
『HotSpots』『Glow』『Living Strategy』など7冊の著作は、計20ヶ国語以上に翻訳されている。
人事、組織活性化のエキスパートとして欧米、アジアのグローバル企業に対してアドバイスを行う。
現在、シンガポール政府のヒューマンキャピタルアドバイザリーボードメンバー。
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