個人/組織と市場の分類から考える「起業と新規事業開発への第一歩」

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個人/組織と市場の分類から考える「起業と新規事業開発への第一歩」

こんにちは、外資系セールスから転職→現在はベンチャー企業にてアクセラレーターを運用しているItaru(@ItaruTomita9779)です。

今回は、起業や新規事業開発に挑戦される時に、事業を始める前、始めたあとにどのような点を気をつければ良いか、お話します。

私の仕事であるアクセラレーターでは、メンタリング(コーチングに近い)と言って、起業家の壁打ちにお付き合いするケースが多いです。

壁打ちを通して、ご本人だからこそやりたいことや、現在注力すべき戦略など、外部者と一緒にだからこそ見える、新規事業開発や起業のやり方を探していきます。

個人で起業される場合と、企業の中で始める場合、また市場の成長度合いに対して分類がありますので、それらの事例で役に立つお話ができればと思っています。

「アクセラレーターってなに?」という方は、下記の記事を参考いただけますと幸いです。

「アクセラレーターって大企業やスタートアップからどう思われているの?」という方は、下記の記事を参考いただけますと幸いです。

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アンゾフのマトリクスと「起業と新規事業開発の市場」の分類

「起業、新規事業開発」と一概に言っても、実際には4パターンほどの事業展開が考えられます。

下記の図を御覧ください。

これは、経営学者のH.I.アンゾフが提唱した「アンゾフの事業拡大マトリクス」というものです。

非常に有名な概念図なので、新規事業に取り組まれている方であれば、既知のフレームワークだと想いますので、解説は不要かと思いますが、ご存じない方向けに簡単にご説明します。

企業が新しく事業を行う際に、下記のように4パターンに分けて事業展開を分析するフレームワークです。

  1. 既存市場×既存製品:現在注力しているビジネスの市場の浸透の施策を考えましょう。(例えば、営業マンを増やしたり、チャネルを変えたり、広告をうったり、等など。)
  2. 既存市場×新規製品:現在注力している業界(食品とか)や顧客のセグメント(年代層とか)に対して、新しい製品を作って売りましょう。
  3. 新規市場×既存製品:2.のように現在注力している業界や顧客ではない市場に進出しましょう。
  4. 新規市場×新規製品:まだ自分たち、会社のノウハウも薄い業界や顧客に対して、まだ見ぬサービスを展開しましょう。(いわゆる0→1の新規事業開発、スタートアップをイメージ。)

もしあなたが「起業したい」だとか、「新規事業を会社でやりたい」という際には、これらの4象限のうち、自分がどれをやろうとしているのかを、意識することで、打ち手が変わるわけですね。

この4象限に対する打ち手の考えるヒントを得ていきたいと思います。

余談:Innovation Ambition Matrixという概念図もある。

ちなみに、企業の新規事業の展開を、自社のビジネスの市場領域や製品と合わせて、アンゾフのマトリクスのように見る場合は、最近は、下記の「Innovation Ambition Matrix」というものも最近は使われているようです。

(ハーバード・ビジネス・レビューの2012年の5月号)

参考程度ですが、自社のステージ(スタートアップ~成熟企業)に合わせて、事業展開のポートフォリオを組みましょうという、概念図です。

  1. 既存事業:Core
  2. 隣接事業(既存×新規):Adjacent
  3. 新規事業(新規×新規):Transformational

平均しては既存から順番に、7:2:1としていますが、ステージやテック産業かどうかによって、自社のイノベーションの適切なポートフォリオは変わるので、ご参考程度ですね。

ステージというのは、スタートアップの創業期であれば、比率は新規事業が10であるでしょうし、テック産業であれば、業界の変化が早いので、新規事業の割合も3などになる可能性があるということです。

意識的にR&Dとして見られがちな「1」のTransformationalに予算をつけたり、売上の10~20%を常にこれで作ることを意識したマネージメントも重要です。

他方で、イノベーションは完全にマネジメントできるわけでもないので、自社が閉塞的になってしまっていないか、意識的に実行していくためのツールとして考えたほうが良さそうですね。

アンゾフのマトリクスの方が、個人の方も企業の方も、馴染みやすいので、アンゾフのマトリクスで今回はご説明します。

起業と新規事業開発の4象限

それでは、これらの4象限に対して、我々が個人で起業するケースや、会社で新規事業をやるケースでは、どのような戦略を考えるべきなのでしょうか。

アクセラレーターをやっていく中での経験を踏まえて、ざっくり下記のように画像でまとめてみました。

市場と予測の関係性

左に市場についてのお話がありますが、書いてあるとおり、新規×新規の事業はスタートアップに近い領域なので、誰もまだ見つけていない市場である可能性が高いです。

また、既存×既存の事業については、既に多くのプレイヤーが競合しており、ビジネスモデルが確立されていたり、予測が立てやすかったりします。

(私がやっているブログは後者の既存×既存の事業になりますね。)

これらの市場の予測性に対して、市場に参入する考え方をいくつか持つ必要があります。

今回は、そのための考えとして、エフェクチュエーションとコーゼーションで分けています。

市場の予測性と「エフェクチュエーションとコーゼーション」の使い分け

エフェクチュエーションとコーゼーションについては、ご存じない方は下記の記事を参考いただけますと幸いです。

簡単に言ってしまえば、エフェクチュエーションは自分の手段(自分が何したいか、自分の持ってる資源や商品や人脈は何か、専門知識は何か)を軸に、市場を作り出す考えです。

  1. 手中の鳥の原則(bird in hands):今手元にあるリソースから始める
  2. クレイジーキルトの原則(crazy quilt): 協力してくれる人を増やす
  3. 許容可能な損失の原則(affordable loss): 許容可能な損失額を設定する
  4. 飛行の中のパイロットの原則(pilot in the plan):コントロール可能な部分に集中する
  5. レモネードの原則(lemonade):偶然の出来事を活用する

他方で、コーゼーションはマーケティング理論のように、市場を分析して、勝てる機会を見つけ出して、市場に参入していく考え方になります。

あなたが「起業したい」、「新規事業をやりたい」、といった際には、これらを考慮して、行動様式を変えないと、無駄な行動をしてしまいます。

なぜなら、未来が予測できない市場において、コーゼーションで予測しても仕方がありませんし、予測できる市場でエフェクチュエーションで1から始めるのは無駄ですよね。

簡単に申し上げていますが、既存×既存も分析したからと言って、必ず勝てるわけではないんですけどね。笑

というのも、自分自身もブログを収益化するのはなんだかんだ時間がかかってしまっていますが、他方でビジネスモデルは簡単なので、ある程度の収益化は可能といったところですよね。

市場の形成の間主観性とエフェクチュエーション

また、なぜ新規×新規の市場でエフェクチュエーションが重要かというところも補足しておくと、市場が間主観的に創られるから、ということになります。

特にAirbnbや、フェイスブック、Amazonのようなサービスは最初から現実に市場があったわけではありません。(iPhoneなんかは携帯電話の市場があったわけなので、既存市場×新規製品に近いわけですが。)

そのような市場は、起業家の強い意志、即ち「こんなサービスがあったら最高だ」という主観に対して、ある人の「それはいいね」という主観が重なり合わないと、いけないわけです。

これが即ち”間主観的”、というわけですね。

そのようなフェーズだからこそ、エフェクチュエーションという結果を作り出す行動様式が大事なわけです。

そのフェーズのあとは比較的、コーゼーションの比重も高めていきながら、市場は最終的に主観から離れて、客観的に存在するものになっていきます。(共通認識、マテリアリズム的に市場が場に”ある”状態。)

なので、0→1の起業をしたい方こそ、主観を持ち続ける必要があります。

主観を生み出すヒントとしては、下記のような問に向き合ってみてください。(0→1であれば、まずは4問目くらいまで)

  1. 自分は何者で、何をしている時に喜怒哀楽を感じるのか。何に夢中になれるのか。
  2. 自分はどんな顧客に詳しいのか、どんな人脈があるのか。あなたならではの顧客のニーズをしっているのか。
  3. 自分は何に専門知識があったり秀でていたり、何が得意でお金をもらえるのか。
  4. あなたの主観は、顧客の主観に受け入れてもらえるものなのか。社会や市場が(潜在的に)求めているのか。顧客に痛みはあるのか。
  5. その顧客の痛みを何で解決するのか、現状は何で解決されている(いない)のか。
  6. あなたのサービスは顧客からお金をもらえるほど、顧客の深いニーズを解決できるのか。
  7. もし新規事業が上手く行かないなら原因は何か、PMFまで何が足りないのか。あれもこれもと事業を多角化しようとしていないか。
  8. 顧客に満足されるレベルになれば、顧客獲得に適切な手法はなにか。リファラル、営業、広告、何をすべきか。事業をすすめる重要なKPIはどこにあるのか。
  9. ステージがレイターになるにつれ、市場の予測や競合とどう戦っていくのか。(シードで考える必要はないですが。)

繰り返しになりますが、後ろの番号に行くにつれて、コーゼーションも意識していくのが良いと思います。

新規事業をサポートしていると、思いがけないトラブルが多いことを、アクセラレーターでサポートしていながらよく見るので、完全にコーゼーションだけでなんとかなるわけではない、という点は注意です。

起業におけるコーゼーションを、一定に理解を得るという意味では、下記の「起業の科学」という本も参考になる部分はあります。

8.の顧客獲得については、こちらのTechCrunchの記事が勉強になります。

LAを拠点とするスタートアップでCOOを務める宮武さんの連載で、元Airbnbでグロース担当Lenny Rachitsky氏の「マーケットプレイスの作り方」を翻訳になります。

私もActcoinというスタートアップでプロボノをしているのですが、ユーザーがアクティブになるコンテツの重要性や、顧客獲得の手法のインスピレーションを得ることができました。

というかよかったらアプリを試してみてください。笑

他方で、科学的に考えれば、全てうまく行く、というわけでもないので、自分の持っている視座(エフェクチュエーション、コーゼーションに関わらず)が常にバイアスが掛かっていることには、常に注意を払ってください。

組織での新規事業開発のジレンマ

「個人で新規事業や起業をするケースなら、上司を説得しなくていいから、それでいいけど、組織だとそれはうまく行かない。」という反論が聞こえてきます。

実際には、企業で新規事業に関わらず、新しいことを始めようとすると、そのような側面は多分にあるでしょう。

私も前職の外資系メーカーでは、自分が新しいサービスをやってみないかと、提案したことがあります。

上司によって反応が違い、納得してもらえないケースは有りました。

他方で、理解のある上司に当たれれば、小さいチームで上司とこっそり、新しいことをしていく、なんてことはやっていました。

改めて、先程の図を振り返ってみましょう。

ご指摘の通り、また右上の象限の通り、組織で新規事業を行う際には、組織の「価値基準」を理解しないといけません。

「価値基準」という言葉に聞き覚えがない方は、下記のクリステンセンのイノベーションのジレンマをご参考ください。

ご存じない方にご説明すると、クリステンセンによると会社というものは、「資源、プロセス、価値基準」から成り立ちます。

資源は人材や材料や工場など、それをお金に変えるのがその企業の独自のプロセスでサプライチェーンや製造技術や販売チャネルなどです。

そして、それを実際に起業として遂行するかどうかを決めるのが価値基準で、収益性は○○%じゃないとだめとか、企業文化やビジョンがあるのでそれに反することはだめ、とか、価値基準に反することはできないわけですね。

トヨタさんがUberをできないように、自社のビジネスをカニバるようなビジネスや、売上を一時的にでも減らしてしまうようなビジネスはできない、というようなことです。

これがいわゆるイノベーションのジレンマであり、組織で新規事業を行う難しさはここに現れるわけです。

なので、組織で新規事業に取り組む方は、19年前の本ですが忘れがちな、イノベーションのジレンマは基礎的に理解する必要があります。

組織の新規事業開発の限界と可能性

このような組織の価値基準に邪魔をされると、普通の社員なら、この会社はだめだとか、この会社は新しいことに取り組む気概がないとか、そんな批評をしてしまうこともあるでしょう。

そうであれば、その新規事業は、「その会社では・もしくはあなたにはできない」ことなのかもしれない、ということを少し疑うべきです。

あなたがそれを本当にやりたいのであれば、別にその会社でなくてもいいのではないか、転職してスタートアップに行くか、会社を辞めて起業する選択肢だってあるわけです。

しかし、これに踏み出せない気持ちはかなり理解できます。

というのも、人間はそこまで自分のやりたいことがない人も多いですし、今の会社にそんなに不満があるわけでもないでしょう。

わざわざリスクを取って、起業するレベルではなく、会社の価値基準を変える方法が思いつかない、ということなのかもしれません。

もしくは、会社の価値基準を説得できるようなハイレベルな提案ができていない可能性もあり、会社を変えられないけど辞めたくないなら、「諦める」という選択肢を取らざるを得ないでしょう。

自戒を込めて書くわけですが、会社は我々のためにあるのではなく、顧客のため・社会のために存在するので、行動せずに愚痴を言うのはお門違いなわけですね。

他方で、組織で新規事業に取り組むメリットも非常に大きいでしょう。

自分の財布からお金を出さずに、大きな資金や予算をいただけることもありますし、世の中にインパクトを与える事業を個人で始めるよりも、スタート地点では持っている可能性も高いでしょう。

また、その企業ならではの、サプライチェーンや業界の深い困りごとの把握、優秀な人材とのネットワーク、信頼性など、いわゆるアンフェアアドバンテージもかなり持っています。

アンフェアアドバンテージに関連して、これからはスタートアップに触発された大企業が世の中を変える新規事業を起こす時代になるかも、という論文もあるくらいです。

下記はその論文、スコットアンソニーのスタートアップ4.0というもので、「カタリスト」の重要性が説かれています。

イノベーションをめぐる世界が劇的に変化している。個人発明家が活躍した第1期企業内研究所が中心だった第2期を経て、ベンチャー・キャピタリストの支援を受けたスタートアップ企業が登場したのが第3期である。その後、イノベーションが容易かつ低コストになり、大企業は起業家的な行動を採り入れ始め、大企業独自の強みを活かしたビジネスモデルのイノベーションが増えてきた。その結果、スタートアップ企業が優位性を持続しにくくなっている。
第4期のいま、大企業内で起業家精神に富んだ「カタリスト」(触媒)を中心に、企業のリソース、規模、機動力を活かしてグローバル課題に取り組む、新しい形のイノベーションが生まれている。それには、オープン・イノベーション、意思決定の簡素化、失敗に寛容な文化など、カタリストが活躍できる環境を整備し、目的意識を持って取り組まなくてはならない。本書では、メドトロニック、ユニリーバ、シンジェンタ、IBMの事例を紹介する。

*『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー(2013年8月号)』に掲載された記事を電子書籍化したものです。

組織で新規事業を行う際には、価値基準の理解と、ぶつかるであろう提案の壁、そして会社で本当にやる必要があるんだっけ、ということを振り返ってみてください。

仕事の挑戦と人生の関わりをどう考えるべきか。

さて、新規事業について、つらつらとお話してきたわけですが、上記のことを考慮しても新規事業(既存×既存でも、新規×新規でも)は難しいものです。

Google Venturesの調査では、VCから出資を受けて起業をする際に、成功する確立はおよそ15%とされています。

Kraus says that analysts have discovered research that overturns some of Silicon Valley’s most cherished bits of lore. Take that old idea that it pays to fail in the Valley: Wrong! Google Ventures’ analysts found that first-time entrepreneurs with VC backing have a 15% chance of creating a successful company, while second-timers who had an auspicious debut see a 29% chance of repeating their achievement. By contrast, second-time entrepreneurs who failed the first time? They have only a 16% chance of success, in effect returning them to square one. “Failure doesn’t teach you much,” Kraus says with a shrug.

そんな千三つな新規事業の世界でも、あなたはやりがいを感じるのであれば、気概を持って取り組めばいいですし、そこまでであれば、別にやらないといけないわけでもありません。

また、会社でできないのであればできない、というバイアスを外すことも大事ですよね。

自分の人生が、組織のビジョンに100%合致するわけはないでしょうし、無理に合わせる必要もありません。

他方で、理想を追求していくこと、自己実現を問い続けることに、価値を感じるのであれば、その限りでもありませんし、多くの人は、「悶々とした悩み」を抱えていることもあるでしょう。

それに関連して、先日、三島由紀夫の人生を東大全共闘(1968年の学生運動)を通じて、写していく映画を見ました。おすすめです。

三島由紀夫は、戦争を経験したのち、作家活動を行うわけですが、戦中の天皇思想がアイデンティティの形成に深く影響する中で、その文章表現から次第に反米愛国運動を実践していき、最後は自殺してしまうわけです。

その人生のワンシーンである、東大全共闘で、三島由紀夫の一貫した自己の主張が(思想はどうあれ)面白いわけです。

東大全共闘で、芥さんという方から、「あなたの認識では日本人という限界を超えられない、可愛そうだ」と言われて、三島由紀夫は「それで良いんだ」と答える。

そして最後は自殺する、そんな姿を見た芥さんは、「自殺できてよかったね」と言うわけです。

つまり、自分の主張を曲げずに、自分のやりたいことを首尾一貫した人生であり、それを最後に達成できてよかったね、ということです。

三島由紀夫のように、すべての人間が、自己を一貫して主張して、悶々とせずに一所懸命生きれるのが理想ではあります。(極論である自殺を肯定しているわけではありません。笑)

しかし、誰もが吹っ切れるわけではありません。

誰もが起業をして、ハードシングスを経験して、世の中を変えていく、そんな世界は素晴らしいですが、いつの時代も「一歩踏み出せず悶々とした人」はいるわけです。

大切なのは、そんな悶々した状態から、本当にありたい理想の姿に対して、「一歩踏み出す」、そんな手段や考えにアクセスできることが大事だと思います。

今回の記事が、新規事業を一方踏み出す、そんな悩みの参考になればいいと思っているわけです。

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