【書評】ワークマンはなぜ2倍売れたのかで学ぶ変える経営変えない経営【要約・感想】

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【書評】ワークマンはなぜ2倍売れたのかで学ぶ変える経営変えない経営【要約・感想】

こんにちは、外資系セールスから転職→現在はベンチャー企業にて起業家を支援している冨田到(@ItaruTomita9779)です。

突然ですが、「皆さんの会社の売上を2倍に増やしてください」と言われたら、どう反応されますでしょうか。スタートアップでもない限り、「無茶を言わないでください」と思ってしまう方思われます。

その無茶を可能にしたのが、みなさんがCMで馴染みのあるワークマンなのです。

今回は、『ワークマンは商品を変えずに売り方を変えただけでなぜ2倍売れたのか』という本を書評していこうと思います。圧倒的な良書でした。

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内容

北関東の作業服専門店がアウトドアショップに転身!?「アパレル史上に残る革命」の裏側を渾身ルポ!
【全編コロナ後、書き下ろし! 「ワークマン初のビジネス書」誕生】
作業服専門店がアウトドアショップに転身!?
商品を全く変えず、売り方を変えただけで2倍売れた、
「アパレル史上に残る革命」の舞台裏を渾身ルポ!
消費増税も、新型コロナ禍も、全く揺るがぬ右肩成長。
ワークマンはなぜ、強いのか。その強さは、本物か。
ビジネスモデルのすべてに迫ったノンフィクションの決定版が登場。●新業態「ワークマンプラス」は、なぜ生まれたのか?
●「ワークマンを変えた男」とは?
●実は「データ経営」企業だった!
●販促費を全くかけずに売り切る秘策!?
●まだまだある「第2、第3のワークマンプラス」
初出し情報多数。
国内店舗数でもコスパでも「ユニクロ超え」を果たしたワークマン、
大躍進のカラクリを仕掛け人が独占激白!≪目次≫
はじめに   ワークマンとは何者か
第1章   ワークマンを変えた男
第2章   大躍進の裏に「データ経営」あり
第3章   ものづくりは売価から決める
第4章   ファンの「辛辣な文句」は全部のむ
第5章   変幻自在の広報戦略
第6章   店づくりは壮大な実験
第7章   継続率99%! ホワイトFCへの道
第8章   「変えたこと」と「変えなかったこと」
第9章   アフターコロナの小売りの未来

著者について

酒井大輔(さかい・だいすけ)
1986年石川県生まれ。京都大学法学部卒業後、金沢で新聞記者に。北陸新幹線担当として経済部、社会部で開業報道を担う。2017年2月、日経BPに入社。日経トレンディ編集部に加わり、五輪連載「Road to 2020」を担当。18年8月から日経クロストレンド兼日経トレンディ記者。20年6月から日経クロストレンド記者。再開発・商業施設・ホテル・新業態店からヒット商品、スタートアップ、経営者インタビューまで。街が変わる、世の中を変える試みの背景を、物語まで描き出す一本入魂スタイルで執筆を重ねる。

ワークマンが変えたこと、変えなかったこと

みなさんも吉幾三さんのCMで御存知の通り、ワークマンは職人さんの作業着を販売する会社でした。PB(プライベートブランド=自社製造品)を持たずに、販売に特化していたのですが、2015年を目処に変化が起こります。

ワークマンがPB(自社製造品)を作り、SPA(製造小売業)に変化していったのです。近しい業態で言うとユニクロであり、顧客接点を持つ小売店舗を活かすことを狙っていました。

その時に、ワークマンの経営陣に招かれたのが元三井物産で新規事業をバンバン開発されていた土屋さんでした。土屋さん擁する新生ワークマンが、近年のワークマンプラスなどを創造していったのです。

土屋さん含む経営陣が考えていたことは、小売業だけでは頭打ちになるので、今のワークマンを更に伸ばすためには、どうすればよいのか?という命題だったわけです。その命題をどう解いていったのか、ということが『ワークマンは商品を変えずに売り方を変えただけでなぜ2倍売れたのか』から理解できます。

その命題のために、ワークマンが打ち出した戦略が、SPA化に伴う、①強みを活かす、②データ経営、③提供価値へのこだわり、ということが本書から読み取れます。

ワークマンの戦略:①強みを活かす

①強みを活かすという観点では、ワークマンはそもそも「圧倒的なコストと圧倒的な機能性」という強みを持っていたところをアパレルに転用したことです。みなさんも、ニュースでワークマンプラスというららぽーとに展開されているような店舗を見たことがあるかもしれません。

ちなみに、なぜ、このような強みを持っていたのかと言うと、職人さんの作業着を扱う業界の競合の「寅壱」さんに負けないために、自社の顧客への提供価値を磨いた結果の強みだったのです。

ただ単純にアパレルに転用したように見えますが、そもそも自社の強みを、今いる市場から離れてみて、広い視野で考えたときに、どのような強みを持っているのか、保持できているのか、ということを迷うことなく答えられる会社がどれだけいるのでしょうか。

これは、スタートアップの初期フェーズであれば、答えられるかもしれませんが、大企業・中小ベンチャーの競争環境に足を踏み入れた会社ほど、「自社のオンリーワンな強みはなにか?」ということを納得感を持って語ることが難しいように思えます。

顧客に対して、自社の強みを磨き込み、その強みが結果として、他の市場でもニーズがあったということが、ワークマンから学ぶことができますし、どの顧客にサービスを尖らせているのか?という視点が大事なことに気付かされます。

更に、ワークマンは強みに気づくだけではなく、SPA化を行うという投資を決断しながら、マーケティング・チャネルの拡大にも挑戦しているのも素晴らしいです。

ワークマンの戦略:②データ経営

また、②のデータ経営については、全社員へのデータ分析の研修を組み、データ分析の思考法を理解させ、現場の非効率を発見し、自分たちでアルゴリズムを組み、改善していくという凄まじい徹底ぶりでした。

ただ単純に、今流行りのDXということを単純に導入したわけではありません。

ワークマンは元々、どのオペレーションも誰でもできるようにしているマニュアル企業であったとのことで、そのマニュアルを更に磨き込んだのがデータ経営なのです。店舗運営のノウハウをマニュアル管理していたところを更にデータ管理をしていくということなのです。

具体的には、店舗の在庫管理・需要予測・発注管理をすべてエクセルでアルゴリズムを組んで、発注システムの基礎を自社で作っています。

新生ワークマンには、「自社で理論が理解できて初めて、他社に外注することを許す」、といったデータ経営の理念があり、単純に流行りに乗っかって、DXをしているわけではないのです。

土屋さんいわく、変にAIなどで外注してしまうと、大事なデータがなぜそうなるのか、という大事なプロセスや人間に大切な推測力をブラックボックス化してしまうという鋭い指摘がありました。

流行りのDXやシステム導入を行うときには、自社がそのシステムのプロセスを理解できていたり、データを取り扱えるような風土があるのかであったり、ということができないと、システムの奴隷になる・使われない・応用が効かない組織が完成する可能性があると感じました。

ワークマンでは、店舗を出す際にも、同時に違う地域で出した店舗で、違う内容の内装にすることで、ABテストを行ったり、駐車場の使われ方をチェックしたりと、徹底的なデータ観測を行う文化が形成されているのも、「データ経営」がハリボテの言葉ではないことが理解できます。

もし、あなたの会社が新しいシステムを入れたり、DXを行うということ、またデータ経営に取り組む、となったときには、普段からデータをどのように取り扱っているのか、ということに意識を向ける必要がありそうです。

ワークマンの戦略:③提供価値へのこだわり

そして、③提供価値へのこだわり、ということについては、顧客や利害関係者に貢献するために、こだわり続けることを決めて、やりきることです。

ワークマンの競合で言うと、アクティブなウェアということで見ると、ノースフェイスやデカトロンなどが存在しますし、小売という観点ではAmazonがいます。

また、サプライチェーンの観点でいうと、小売業なので、店舗の経営を行うフランチャイズのオーナーをどう確保するかということも課題になります。

ここで、ワークマンがこだわったのは、ワークマンの価値である低価格×機能性を担保するための原価率65%(高いほど製品の利益は少なくなるが、材料費がかかっており、品質が高い可能性がある)であり、Amazonとは戦わない(=通販で戦わない)店舗戦略であり、フランチャイズオーナーへのホワイト経営なのです。

原価率へのこだわりのための施策が本書ではふんだんに盛り込まれていますが、中国の製造業者との信頼関係構築の話は印象的です。

また、Amazonについては、配送で敵うわけがない、という土屋さんの分析・判断も素晴らしく、店舗で受け取れるようなEC戦略をとっています。

フランチャイズへのホワイト経営も「今のコンビニのロイヤリティ制度(売上に比例してお金をフランチャイズ本部に払わないといけない)は良くない」という土屋さんの理念から、フランチャイズオーナーも儲かる経営を徹底しています。

一見、儲けという観点から見ると、原価率を下げたり、目の前の通販の盛り上がりに飛びついたり、オーナーから搾取したり、ということをしてしまいがちなのですが、それをしないことで、顧客・利害関係者への提供価値を保っているとも見て取れます。

逆説的ではありますが、自分たちの会社を翻って考えてみて、一見非効率だが、自社の競争優位や顧客貢献を担保するようなこだわりがあるのか、考える切っ掛けにしても良いのではないでしょうか。

売上2倍の新生ワークマンの経営とは

新生ワークマンが教えてくれることは、変えることと、変えないことを明確に戦略として打ち出す経営であり、その経営においては現場の顧客や利害関係者への貢献の積み重ね・現場戦術の積み上げ・組み合わせであることです。

  • 顧客にとって、市場において、自分たちの強みはなにか、オンリーワンなポイントはなにか。
  • 顧客満足のために取り入れるべきものはなにか、変えないほうが良いことはなにか。
  • 上記を言語化し、会社の戦略と戦術として発信できているか、実行する決断をしているか。

ぜひ、『ワークマンは商品を変えずに売り方を変えただけでなぜ2倍売れたのか』から、上記の問いを深堀りしてみてください。良い対話ができる本です。

ビジネス評論
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