失敗事例から学ぶ、顧客ペインを探る為のユーザーインタビュー【スタートアップ】

スポンサーリンク

失敗事例から学ぶ、顧客ペインを探る為のユーザーインタビュー【スタートアップ】

こんにちは、外資系セールスから転職→現在はベンチャー企業にて起業家を支援している冨田到(@ItaruTomita9779)です。

スタートアップのシード期や社内起業の仮説検証のタイミングを支援していると、「顧客のインサイト・ペイン」を顕在的なものしか聞けておらず、顧客を都合よく解釈しているケースがあります。

なぜ、そのような状況になってしまうのかを深堀りしてみると、「顧客・ユーザーインタビュー」の方法がわからないという悩みのご相談が多いのです。

顧客・ユーザーインタビューというものは、やり方をしらないだけで、実際には誰でも出来るのですが、そもそもインタビューを軽視してしまったり、顧客の困りごとを抉れないインタビューをしてしまったりするケースは絶えません。

今回は、「なぜインタビューが大事なのか」という点からを考え、現実にやってしまいがちな「失敗インタビューあるある」、そして「適切なインタビューはなにか」という流れで考えていきたいと思います。

上記の大切なポイントについて、ぜひ設計方法を考えてみてみましょう。

スポンサーリンク

なぜ顧客インタビューが大事なのか

まず、そもそも、なぜ顧客インタビューが大事なのでしょうか?

これは、非常に当たり前のお話なのですが、顧客にインタビューをしないと、ビジネスの種になる顧客の困りごとを間違えてしまうからです。

私自身もお恥ずかしい話、新しいウェブサービスを顧客のインタビューをせずに、MVP(最低限、価値を感じれるレベルのプロダクト)として持っていき、使用をおすすめするようなことをした結果、使用率が5%以下のような結果になったことがあります。

その時に間違えてしまった理由は明確で、顧客ではなく、自社や自分の困りごとを第一に考えてしまい、顧客にソリューションを押し付けてしまったからなんですよね。

当然、顧客の困りごとをインタビューしていれば、そのようなソリューションを間違えて作ってしまうことも、筋の悪い仮説・妄想を顧客にぶつけずに済むわけです。

また、技術系・大学発のスタートアップのあるあるでもありますが、技術ありきで顧客を探してしまうことも、結局は営業・マーケティング戦略で売らざるを得ず、他方で営業・マーケティングがきちんとしていると、そのような技術ありきにもならないので、企業の成長が本当に苦しくなります。

下記のエフェクチュエーションという起業家の行動様式の研究をした本の書評でも、技術は外適応させるべきだ、というポイントがあるので、ぜひご参考ください。

また、下記のイノベーションの解という本の書評の中でも、顧客の用事に着目することが、イノベーションを起こす上で、重要とされています。特に大企業であれば、その顧客の困りごとが数字に変換されてしまい、薄まってしまう現象もあるので、注意をしなければなりません。

失敗する顧客・ユーザーインタビューあるある

上記のように、顧客の困りごとを発見するためのインタビューをしないと、勘違いしたまま、市場に出てしまうことがあるのですが、実際にはインタビューをしても、顧客の困りごとを間違えてしまうことがあります。

それでは、どのような失敗があるのか、という点を下記に列挙します。

  • そもそも、インタビューではなく、アンケートを取ってしまう。
  • 顧客の顕在的な悩みのみを聞き取り満足してしまう。ペインの深さや熱量を見れてない。
    • 明らかに誰でも肯定するような、自分の仮説を肯定するような聞き方をしてしまう。
    • 自分の仮説が間違っている理由を顧客に聞いてしまう。

失敗:インタビューではなくアンケートを取ってしまう

1番目はかなり筋が悪いパターンですが、ビジネスサイドの経験が薄い、営業経験がないタイプの方だと、このようにアンケートをしてしまうケースが多いんです。

実際に、インタビューというものは、自分の知らない・連絡先のない・馴染みのない業界であればあるほど、正直営業系の人でも、「面倒だなぁ」と思ってしまうと思いますので、気持ちは理解できます。

また、アンケートを使うことが会社のマーケティングプランや予算として、慣習化してしまっている会社もあると思うので、まずはその考え方を捨てることが重要だと思われます。

アンケートをしてしまうと、その場では深堀りが出来ません。Yes/Noの回答や自由記述でもその人が思ったことしか書けません。

それでは、その方の悩みをもう一歩深堀りすれば、発見があるようなケースを逃してしまいます。浅いアンケートでは、誰もが知っているような情報しか集まらない可能性が高いのです。

誰もが知っているのであれば、それは既にサービスがあるか、そこまで困ってないことも多いです。また、相手の語り口調や熱量がわからないことも問題です。

アンケートを使うケースは、ある特定の課題に対するマスへの定量的な調査・意見集約や、NPS(Net Promoter Score)のような満足度の調査、課題の優先順位付けや、顧客をスクリーングするためのチェック、会社に納得感持ってもらうための説得材料などを集めるのに使うのが良いでしょう。

マーケティングのための様々なメトリクス(指標)を学ぶには下記が初学者にもおすすめです。

失敗:顧客の顕在的な悩みしか聞き取れていない。

さて、先程のアンケートで顧客の声を聞いてしまうということにも関連しますが、インタビューの設計が甘く、顧客の顕在的な悩みしか聞き取れていないケースがあります。

特にスタートアップのサービスについては、ニッチでも少数の方々が熱狂的に支持してくれるプロダクトを作るべきだ、という箴言があります。

これに関しては、スタートアップの失敗の理由のおよそ44%が市場のニーズがなかったからというCBinsightsの記事は参考になります。

市場のニーズを間違えないために、インタビューの際に、想定顧客が熱量を持って、あなたに対して、共感を求めるように語りかけてくる深いペインを見つける必要があります。これは別の言い方でインサイトとも言います。

インサイトは、日本語で洞察ですが、その言葉の通り、深くインタビューしないとわからないような、そのペインの事情や解決された時のゲインの嬉しさのことを言います。

今の飽食の時代に、そのようなインサイトや、ペインを見つけるようなことが難しいのは事実ですが、逆にこれをしてしまうと、深いインサイト・ペインは絶対に深堀りできないだろうというインタビューはあります。

その一つとして、よくあるものが、「このサービスがあったら良いと思いますか?こうなったら良いと思いますか?」と聞いてしまうことです。

質問というものは、設計をしっかり考えないと良い質問が出来ませんので、失敗インタビューでは、直感的で楽な質問をしてしまいます。

しかし、楽な質問をしてしまうと実際には顧客からは適当な肯定的な返事しか返ってきません。

顧客に上記のようなインタビューをした結果、顧客は適当に返事をしているのに過ぎないのに「”良いね”、”欲しい”と8割の人から言われました。」というような理由から始まる事業はまずアウトですよね。

顧客というものは嘘をつくもので、人を傷つけたくない、なんとなく困っているので、提示された質問に対して、良いなと答えたということが起こるのです。

自分の設計した質問が、よく考えてみると、誰でも肯定してしまうかもしれないような、表層をなぞるような質問ではないか、注意を払ってみてください。

私も一度失敗したことがあるのが、建築系の資材の新製品のインタビューの際に、現在のものに比べて楽になるという声を聞いて製品化されたものが、実際には使用する時の慣れを乗り越えることが出来ず、市場に広がるのに時間がかかったことがあります。

これは、たしかに現在のものに比べて、作業が楽になるのですが、Must Haveで困っているようなものではなかったということなのです。

また、インサイトとしても、時間短縮やコストダウンなどは当然ありましたが、顧客にとってはそこまで問題ではなかったのです。

大手企業であれば、資本力で押し切り、市場に浸透させることもできるかもしれませんが、顧客にとってMust Haveかどうかは、インタビューをしっかりしつつも、売ってみるまでわからないということも事実なので、注意が必要です。

そのため、熱量を持って語ってくるか、ということに加えて、現在のペインに対して、実際にどこまで不便な対策を取っているか、という行動を見てみてください。時間がかかる、お金がかかる、凝った手間をかけている、顧客の用事と困りごとをFactベースで収集しましょう。

あくまで、行動・事実ベースで聞いてみてください。これを計画や予定ベース、例えば「〇〇の場合はどうしますか?」のように聞いてはだめで、「〇〇のとき、実際にどうしていますか?」と聞く必要があります。

現状の対策を、あなたのサービスでコンバージョンすることが、どれだけ不便・不利益の解決として価値があるのかを理解する一助になります。

深いペインは、特別なスキルがないとだめだったり、お金がないと解決できないことであったり、であることが多いです。

また、クリステンセンのジョブ理論における「破壊ペインの解決のために、引き換えにしても良いことは何か」という観点も大事で、費用も手間もかけずに解決したい、解決できるならとにかくアプリを購入したい、などといった条件も存在するからです。

ちなみに、クリステンセンのジョブ理論における、顧客の困りごとを発見するための5つの質問は下記の通りです。

  1. その人が成し遂げようとしている進歩は何か。(例:仕事で第一印象の良さを与える笑顔が欲しい。)
  2. 苦心している状況は何か。(例:年二回歯医者に行くのに、歯が思うほど白くならない。)
  3. 進歩を成し遂げるのを阻む障害物は何か。(例:歯を白くする歯磨き粉は効果がなかった。)
  4. 不完全な解決策で我慢し、埋め合わせの行動をとっていないか。(例:家でホワイトニングできるキットを買ったが使いづらく歯が痛む。)
  5. その人にとって、よりよい解決策をもたらす品質の定義は何か、また、その解決策のために引き換えにしても良いと思うものは何か。(例:専門の歯科治療ホワイトニングを受けたいが、時間はかけたくない。)

また、自分ならどう解決できるか、不合理を体験して仮説を立てる、インサイトやペインを確認するために、考え抜きましょう。下記の女性向けフリマアプリのフリルを作られた堀井さんの考え方もかなり参考になります。

失敗:自分の仮説の誤りの原因を顧客に聞く。

また、インタビューにおいては、顧客の困りごとを聞くものと、顧客の困りごとを解決するソリューションの適切さを聞くものがあります。

後者について、ありがちな失敗インタビューとしては、「なぜ、〇〇した方が良いのに、〇〇しないのですか?」、「〇〇を使って解決しない理由はなんでしょうか?」と聞いてしまうことです。

仮に、顧客の困りごとを発見できたとしても、上記のようにその対策をなぜとっていないのか?ということを聞くことにはあまり意味がありません。(他方で、問題の構造を把握するために、理由を聞くことは良いと思います。)

これもやってしまいがちなのですが、顧客は正解を知らない(iPhoneや馬の時代の自動車など)ケースが多いからこそ、もっと言えば無消費市場であれば困っていることにすら気づいていないケースもあるので、問いを立てても仕方がないわけです。

もし答えてくれても、他の選択肢はお金が高いとか、使いづらいとか、大きさが不満とか、置く場所がないとか、そんな質問をしなくても、想定できる答えが帰ってくる可能性があります。

また、その答え自体も、割と適当に答えており、本音は違うかもしれませんし、お金の問題ではなく何か心理的なハードルがあるようなこともあります。

自分の質問に対して、相手はどのようなことを答えそうか、その想定される答えの裏側に何が潜んでいるだろうか、どう聞けば深いペインは出てくるだろうか、そもそもないかもしれない、といったあらゆることを想定して、質問を組み立てたほうが良いでしょう。

一つ考え方としてあるのが、顧客・ユーザーが現在の困りごとに対して、どのような代替手段をしているか(例えば、本当はスーパーで楽に買いたいのに、それの代わりに、海外から直輸入するような面倒をしているなど)を、しっかり深堀りするのがいいでしょう。

これらは慣れもありますが、知っているかどうかであり、あとは想定される困りごとをどれだけ多くの顧客にヒアリングし、自分が納得感を持てるか、その納得感をどう検証するかが大事かと思います。

ぜひ、下記のような問に向き合っていただき、その上で、顧客にインタビューをしてみましょう。

  • そもそも、検証したい仮説は何か?
  • そもそも、顧客は、具体的に誰か?
  • そもそも、顧客の困りごとは、具体的に何か?
  • どうしたら、その顧客にインタビューができるのか?リーチ出来るのか?
  • 顧客の困りごとはどのような事実・行動から生まれるか?
  • 顧客の困りごとはどのような社会的な構造から生まれるか?
  • 顧客の困りごとはお金を払ってでも、Must Haveで解決したいものなのか?

また、もっとインタビューの方法論について、広くチェックされたい方がいらっしゃいましたら、下記の東大の馬田さんのスライドも大変参考になります。ぜひご確認ください。

適切な顧客・ユーザーインタビュー

さて、上記の通り、顧客の深いペインや、インサイトを図るために適切なインタビューを実施していただければと思います。

他方で、実行フェーズでよくいただく質問として、「何件、何人、どれくらいインタビューして、どれくらいのペインが見つかれば良いのでしょうか?」というものがありますが、ビジネスは学校の定期テストではないので、正解がありません。

下記の記事にもあるように、実際に売ってみないとわからない、お金を払ってくれるかが大事、というご意見もありますので、インタビューを行いつつ、どうそれを検証するかが鍵になります。

その際に、顧客にどう会って、どう検証するかのアイデアも非常に重要になりますので、下記のスタートアップ初期検証の記事もぜひ参考に見てみてください。

そして、実際に顧客のインタビューから、シード期のセールスをどう行うか、という点については、下記の記事をご参考いただければと思います。スタートアップでの事業支援や、起業家メンタリングを通じて得たものをまとめています。

ビジネス
スポンサーリンク
スポンサーリンク
ブログを購読する

ブログの更新をメールでお知らせします。

ItaruTomita9779をフォローする
スポンサーリンク

コメント

タイトルとURLをコピーしました