【感想・考察】中国SF小説「三体」と共に想像力の限界を突破しよう【書評・まとめ】

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【感想・考察】中国SF小説「三体」と共に想像力の限界を突破しよう【書評・まとめ】

こんにちは、外資系セールスから転職→現在はベンチャー企業にて起業家を支援している冨田到(@ItaruTomita9779)です。

今回は中国でバカ売れしているSF小説、そして日本でも翻訳されバカ売れしているSF小説「三体」の感想を述べたいと思います。

この「三体」、バラク・オバマ前大統領、Facebookのマーク・ザッカーバーグCEO、ジェームズ・キャメロン監督などが絶賛の感想を送っているそうです。

またこの「三体」、SF界隈でどれぐらい凄いかと言われていると、ハイパー名作SF小説の「星を継ぐもの」にも匹敵すると言われているそうです。

さて、今回はこの「三体」を私も読みましたので、感想を共有させていただきたいと思います。

感想のまとめとしては、以下のポイントになります。(一部ネタバレ注意)

  • 中国=共産問一党独裁体制の国家が舞台であることが興味深い。
  • 特に文化大革命のシーンの激しい描写が新鮮で印象的でした。
  • とにかく作者の想像力の限界が見えない。
  • 「科学」という現代では絶対的な価値観が揺れ動く様が見られるのが面白い。
  • 「科学=絶対的な世界の見方」を失ってしまうかもしれない人類が、どう翻弄されていくのか?という点も筆者の想像力の深さが垣間見えます。
  • 人間の絶望と希望を「文化大革命=紛争による今までの価値観の崩壊、三体との接触=今までの価値観の崩壊」の2つから描いており、中国でこの本が売れている意味を考えさせられる。

内容紹介

物理学者の父を文化大革命で惨殺され、人類に絶望した中国人エリート女性科学者・葉文潔(イエ・ウェンジエ)。失意の日々を過ごす彼女は、ある日、巨大パラボラアンテナを備える謎めいた軍事基地にスカウトされる。そこでは、人類の運命を左右するかもしれないプロジェクトが、極秘裏に進行していた。

数十年後。ナノテク素材の研究者・汪淼(ワン・ミャオ)は、ある会議に招集され、世界的な科学者が次々に自殺している事実を告げられる。その陰に見え隠れする学術団体〈科学フロンティア〉への潜入を引き受けた彼を、科学的にありえない怪現象〈ゴースト・カウントダウン〉が襲う。そして汪淼が入り込む、三つの太陽を持つ異星を舞台にしたVRゲーム『三体』の驚くべき真実とは?

本書に始まる“三体”三部作は、本国版が合計2100万部、英訳版が100万部以上の売上を記録。翻訳書として、またアジア圏の作品として初のヒューゴー賞長篇部門に輝いた、現代中国最大のヒット作。

著者略歴

劉/慈欣
1963年、山西省陽泉生まれ。発電所でエンジニアとして働くかたわら、SF短篇を執筆。『三体』が、2006年から中国のSF雑誌“科幻世界”に連載され、2008年に単行本として刊行されると、人気が爆発。“三体”三部作(『三体』『黒暗森林』『死神永生』)で2100万部以上を売り上げた。中国のみならず世界的にも評価され、2014年にはケン・リュウ訳の英訳版が行刊。2015年、翻訳書として、またアジア人作家として初めてSF最大の賞であるヒューゴー賞を受賞。また、原作短篇「さまよえる地球」が『流転の地球』として映画化、春節中の中国での興行収入が3億ドル(約330億円)に達したと報じられた。今もっとも注目すべき作家のひとりである。

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科学(三体問題)と中国(文化大革命)が織り成すストーリー

本小説のキーワードは2つかなと、個人的に興味深かったポイントを上げます。

やはりタイトルの「三体問題=科学文明」と、「中国(文化大革命)という舞台」でしょうか。

三体問題と科学文明

本書のタイトルである「三体」とは、三体問題という物理学における難問のことを指します。

三体問題/出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

古典力学において、三体問題(さんたいもんだい、英: three-body problem)とは、重力ポテンシャルの下、相互作用する三質点系の運動の問題。天体力学では万有引力により相互作用する天体の運行をモデル化した問題として、18世紀中頃から活発に研究されてきた。運動の軌道を与える一般解が求積法では求まらない問題として知られる。

物理学を専攻していたわけではないので、正直この説明を見てもさっぱりです。

まぁぶっちゃけ私も「三体問題」については、全く理解できいません。

しかし、本書では「三体問題」が、「人類にとっての希望と絶望」のような形で登場します。

西洋文明から発展してきた科学的な世界の分析手法が、現代ではある種、絶対視されています。

しかし、「三体問題」のような現代の科学ではなかなか解くことの出来ない問題が存在します。

小説「三体」の中で、その問題を解くことで人類は宇宙への進出・科学文明の大きなブレークスルーを成し遂げようとするのです。

そのブレークスルーが、一方にとっては「人類にとって希望であり、絶望でもある」という、捉え方がされるのです。

この「希望と絶望」によって、絶対とされる科学的な価値観が「三体問題」によって、揺れ動かされるというのが、本小説の見どころだと、感想として思います。

つまり、今まで信じていたものが崩れるとき、人間はどうなってしまうのか?ということを読み進みながら思うことになるでしょう。

科学者が謎の死を遂げていっていて、主人公もそれに巻き込まれるシーンは本当におぞましいものでした。(ネタバレになるので詳しく申し上げません。)

科学は絶対、データは絶対、科学技術って楽できてサイコー、なんてのが今の世の中です。(原発問題などで見直されてきていますが。)

科学という絶対的な価値観や信じていたものがいつか崩れる日が来るかもしれないしそうじゃないかもしれない。

「三体」が伝えるメッセージは私にとっては、「目の前の常識を疑うということが肝要」ということでした。

(もちろん反科学主義になれ!というよりかはバランスが大事ということです。)

中国と文化大革命

もう一つの興味深い設定が、中国が舞台ということです。

「三体」は、冒頭から過激な「文化大革命」のシーンからスタートします。

文化大革命/出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

文化大革命とは、中華人民共和国で1966年から1976年まで続き、1977年に終結宣言がなされた、毛沢東主導による革命運動である。全称は無産階級文化大革命、略称は文革。 名目は「封建的文化、資本主義文化を批判し、新しく社会主義文化を創生しよう」という政治・社会・思想・文化の改革運動だった。

革命って、価値観が根本から変わってしまう出来事だと思うんですよね。

文化大革命自体は、実は中国の共産党内での政権争いに過ぎないものでした。

しかし、革命の際の至上命題は、「西洋的価値観である資本主義文化や科学的思想に染まらない事」になります。

その結果、我々が科学的な分析を信奉しているのと同様に、中国では(SNSが発展した今は微妙かも)共産党を信奉する価値観が打ち立てられたんですよね。

あえて、文化大革命を小説の一番最初に持ってくる、ここが自分としては示唆深かったですね。

そして、科学的な価値観が揺さぶられるシーンがこの「文化大革命」のあとに出てくるわけです。

しかも、この小説が書かれたのは現代中国で、しかもその中国で馬鹿売れしているんですよね。

科学的な価値観の揺れ動きと、中国共産党政権、どちらも世界や時代が変われば宗教のような絶対的な価値観に変わりはありません。

現代中国での「三体」のメガヒットにおいて、上記のコントラストが非常に皮肉的で興味深いんですよね。

小説「三体」の文化大革命の科学的な価値観を打倒しようとするシーンで、ある学者がこんな台詞を言います。

「思想が実験を導くべきか、それとも実験が思想を導くべきか?」

共産党的価値観も、科学的な価値観も、どちらも思想です。ただ、どちらかに過度に依拠した思考のフレームワークを持つことは、本質を見誤ることにつながるのだと思います。

共産党の価値観に染まるのではなく、科学的な価値観ともバランスを取るべき、ということが垣間見えるシーンですよね。

【ネタバレ感想注意】「三体」から考える想像力の限界突破

「三体」は、とにかく人間の想像力の限界を遥かに超えてしまっている点が、面白いんですよね。

私はネタバレを避けてここまで、書いてきましたので、情報量が少なく見えますが、実際はこの10倍ほどの情報量が降り注ぐので、要注意です。

ここから少しネタバレを挟みますが、本書は「今まで信じていたものを疑う日が来る」ということを教えてくれます。

その疑いは我々の想像力の限界を突破するヒントになるかもしれないし、挫折の小石かもしれません。

我々が絶対視している科学であったり国家という思想、それを遥かに凌駕する存在が実はいるかもしれない。

それは「三体」で終盤に出てくるような、三体星人=地球外生命体なのかもしれないです。

まぁ、地球外生命体と言っても、結局は違うエリアにいるだけの存在なんですよね。

言ってしまえば、昔は日本という国も邪馬台国だけだったわけですけれども、それが地球規模の世界観に広がり、それが宇宙に広がっただけの話なんです。

我々の想像の限界ってものは、ただ想像外の情報を知らないだけのことかもしれないですよね。

知ってしまえば限界なんて無いも等しいです。

人間の知識が増えるにつれて、想像のパターンが増えるとも言えます。

「三体」の作者である劉慈欣さんには、三体星人の世界を表すVRゲーム然り、三体星人による地球科学者への遠隔攻撃然り、その想像力に驚かされました。

地球の科学の発展の阻害のために「基礎研究を破壊せよ」という三体星人の思惑が面白かったですね。

三体星人の進んだ科学力で、地球の科学者の実験を阻害し自殺させたり、圧倒的な科学力を見せつけ宗教を作ってしまったり、多くの攻撃を仕掛けてきます。

沈黙の春(レイチェル・カーソン)という、科学による地球環境の破壊に警鐘を鳴らす、研究が実在します。

このような研究の背景が、実は異星人が科学文明の発展を阻止しようというような侵略行為だったとしたら、そんな想像をめぐらせるのも面白いかもしれません。

科学文明や、地球に住む人類の未来はどこまで、広がっていくのか、そんなことを想像できるのがSF小説の醍醐味であり、「三体」がヒットした理由なのかもしれないですね。

ぜひ、三部作の第一部だけが現在日本語版に翻訳して出されておりますので、まずは第二部を一緒に読んでみましょう。

第二部、第三部と三部作が全部翻訳されたら、全部読んでみんなで感想語り合いたいものです。

自分の想像力の限界や、目の前の常識を疑う力を、「三体」から受け取ってみませんか?

近年SF小説の中では、必読の書です。

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