持続可能なDePINの三面市場とビジネスモデル
昨年末から今年に入って、DePINに関する情報が入ってくることが増えました。
一応説明すると、DePIN(分散型物理インフラネットワーク)は、Decentralized Physical Infrastructure Networksの略であり、エネルギーからモビリティ、気象までのさまざまな市場にサービスを提供する異なる種類のインフラストラクチャを構築します。
要はトークンを活用して、ハードウェアやソフトウェアの運用を分散型に行っていく、コミュニティ主権のビジネスモデルです。物理ではありますが、ストレージなどは一部ハードも含まれるため、そういったものも含まれます。
ちなみに、DePINは、産業規模は現在約2.2兆ドルであり、2028年までに3.5兆ドルに成長するとMessariに予想されています。また、DePINトラックの人気が急速に広がっており、Solana上のDePINエコシステムの時価総額は、Ethereumに次ぐ2.7兆ドルであり、過去1年間でSolanaとDePINの両方が大きな成長を遂げています。
ブロックチェーンは関係性をトークンで明確にワールドワイドに区切ることが可能なので、もしかしたら既存のインフラよりも経済合理性の良いモデルが一部生まれるかも?と思い、ちょっと調べてみました。
DePINの概要
DePINは、プロジェクトトークンを報酬として発行し、プロジェクトエコロジーを使用して展開されたハードウェア機器を購入することをユーザーに奨励します。そして、それによって現実世界の物理的なリソース(商品やサービス)またはデジタルリソースを提供します。
DePINを利用するスタートアップの主な利点は、トークンによるアジャイルなスケール、信頼性と中立性、共同所有権などですね。
既存の需要がそもそも存在するのでいかにサービス供給をサステイナブルにするかが求められると思いつつも、中央集権型のサービスのクォリティにそんな簡単に追いつけないのでは?と思ったりもするので、ユースケースをWeb3特化やトークンインセンティブでずらす必要があるんだろうと思います。
DePINのネットワークは、Wi-Fiステーション、監視カメラ、サーバーなどの物理的インフラの開発をなどサポートします。物理リソースでは、ユーザーが購入したハードウェアデバイスを通じて、地図、道路データ、車両、エネルギーデータ情報、Wi-Fiなどの現実世界の情報を提供することを指します。デジタルリソースでは、ハードウェアデバイスを通じてアイドルの広帯域ネットワーク、GPUコンピューティングパワー、ストレージスペースなどのデジタルリソースを提供することを指します。
DePINの4つの主要セクターは次のとおりです。
- Wireless
- DAppsとブロックチェーンネットワークは、Web3ドメインで効率的に機能するために無線接続と通信が必要です。
- Storage
- ストレージソリューションは、ブロックチェーンや分散台帳技術における分散化された安全なデータストレージの需要を満たします。
- Computer
- ブロックチェーンベースのコンピューティング、スマートコントラクト、および分散プラットフォームの進化は、コンピューティング技術によって推進されています。
- Data Network
- 分散型プロトコルとブロックチェーンネットワークは、効率的で信頼性のあるデータ転送と通信の需要を推進しています。
DePINプロジェクトのトップリストには、以下のプロジェクトが含まれます:
- Helium: 分散型無線通信ネットワークであり、IoTデバイスの接続と資産追跡を支援するヘリウムホットスポットを全世界に展開しています。
- Hivemapper: ダッシュカムを使用して視覚データとGPS地理位置情報をクラウドソーシングすることにより、地理マッピング領域に革命をもたらすプロジェクトです。
- Filecoin: 分散型ファイルストレージを提供し、インターネットアーカイブ、Audius、Huddle01などのプロジェクトをサポートしています。
- Render: 分散型レンダリングサービスに焦点を当て、GPUプロバイダーとユーザーを繋げるプロジェクトです。
- MetaBlox: グローバルに無料で安全なWiFiローミングを提供し、WiFiノードが暗号アルゴリズムを通じてデータの検証と交換を行います。
- DIMO: 移動オブジェクトのデジタルインフラを意味し、車両からのテレメトリーデータを収集し、車両所有者が自動車とのやり取りを変革します。
- Akash Network: 提供者と購入者を分散型市場で結びつけることにより、クラウドコンピューティング産業に革命をもたらすプロジェクトです。
DePINの評価の方法
スイス連邦工科大学の研究者のMark C. Ballandies氏によると、DePINシステムを評価する際には、コアチームの評価、三面市場の需要側の分析、サービス/プラットフォーム側の評価基準、供給側のスケーラビリティの確認、正しい価値がDePINシステムに組み込まれているかの評価が重要、とおっしゃっています。
三面市場(Three-Sided-Marktet)とは、Marketplaceが需要と供給のTwo-Sided-Marketであることに加えて、DePINは分散型なのでサービス提供するエンティティが企業ではなくコミュニティであったりDAOであること、この”サービス”を加えたものです。
三面市場は三面のニーズを同時に満たす必要があるので、非常に高い難易度をもつといえるでしょう。
図にもPoliticsというワードが入っていることから、経済効率性が本当に上がるのが、合理的なマーケットが持続できるか、という超小規模国家的なプロジェクトになるのでしょう。
また、DePINを3 つの側面と、さらに8 つのコンポーネント、および 41 の属性による分類すると、チームに求められる専門性の高さと組み合わせに圧倒されます。
- 分散台帳テクノロジー (DLT)
- 物理インフラストラクチャ ネットワーク (PIN)
- 暗号経済デザイン (CED))
この異種格闘技性ゆえに、DePINのプロダクトやチームを評価する際には、以下のポイントに注意する必要があるとされています。
- コアチームの評価
- 三面市場の需要側の分析
- サービス/プラットフォーム側の評価基準
- 供給側のスケーラビリティの確認
- 正しい価値がDePINシステムに組み込まれているかの評価
彼はOncoyという既存の基準局を活用した高精度測位のDePINのスタートアップの共同創業者でもあり、チームはグローバルで自律分散型のティール組織の専門家集団のようです。
DePINのリスク
リーガルリスク
DePINは国によってはマイニングの環境規制やデータ保護規制などに引っかかる可能性があるため、下記のポイントを問題として上げるケースがあります。
- DePINのユーザーをトークンで奨励するモデルは、国内の規制で禁止されている仮想通貨「マイニング」活動なのか?
- DePINマーケティングモデルに関連する犯罪リスクの予防
- DePINプロジェクトにおけるデータ輸出コンプライアンスの問題に注意する
ファイナンシャルリスク
報酬インセンティブに焦点をあてた分析については、1kxのRobert氏のmirrorで、下記のDePINを含むプロジェクトに関する分析がなされています。
- ストレージ:Arweave、Filecoin、Storj、Sia
- 計算:Livepeer、Akash、Render
- データ/メッセージルーティング/ミキシング(RPCを含む):Pocket、Nym、Hopr
- 無線ネットワーク:Helium(LoRaWAN)、Helium(5g)、Pollen(5g)
- データアクセス/インデックス:The Graph、Covalent
- アクセス制御:Nucyper
これらのプロジェクトはノードに対して、ネットワーク手数料、トークンインセンティブ、その他の寄付金などでインセンティブを支払い、供給ロジックを制限したり、不変にしたり、スケジューリングすることでエコノミクスを制御しています。
ユーザー、ノードプロバイダー、サービサーなどの収入の入と出の仕組みを考慮して、最適な設計を組み合わせるんだろうと思います。
ただ、初期のコールドスタート問題を突破する必要があるので、必ずしも既存の設計を新しいプロジェクトにそのままあてはめてもいいのものか、生存バイアス的なむずかしさはありそうです。
競争のタイミング次第では、そのまま草トークンのまま終わるDePINも少ないくないということですね。うまくいっているところは、資本政策のようにいくつかのパターンを想定して運営されているはずです。
プロジェクト企画→VC調達→デベロッパー集め→DePINの構築のフライホイールのように、ファンドレイジングが必要なビジネスモデルなので、最低でも分散型のサービス提供が1周回るまでは投資家目線では超ハイリスクに見えます。
DePINの持続可能性を考察するためには、チームメンバーのその産業での経験はもちろん、DePINで解決する課題の合理性が求められそうです。
生成AIのファウンデーションモデルについても、分散型のモデルの生成の流れはあるので、パブリックにすべきだがデータ主権は守りたいよね、というプロジェクトなど一定コミュニティの共感が得られるものが良さそうです。
参考文献
この記事はDeskrexでリサーチした結果を参考に書いています。無料トライアルで使いたい方はこちら → https://lp.deskrex.ai/
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