CADCAM冠の脱離と破折への対策・注意点とは?
こんにちは、外資系セールスから転職→現在はベンチャー企業にて起業家を支援している冨田到(@ItaruTomita9779)です。
CADCAM冠のセット後に、脱離や破折といったトラブルがあると、台無しですよね。
患者さんからの信用も失い、再製でコストはかかるし、今までの工程が全て無駄になります。
つまり、経営的に、払うコスト(人・モノ・金・時間)がとても高いのです。
そのための対策として、形成・印象採得・内面処理&サンドブラスト・セメント選びが重要になってきます。
私は歯科業界でも働いた経験があり、今回は材料的な知識をご提供できればと思います。
以下の方々におすすめの記事になります。
・CADCAM冠をこれから始めるけど、はずれないか不安だ。
・CADCAM冠の形成や前処理はどのようにすれば良いのかわからない。
・CADCAM冠の材料選びはどんなものを使ったら良いのかわからない。
CADCAM冠とは?
シリカ微粉末とそれを除いた無機質フィラーの2種類の合計が60%以上であり、重合開始剤として過酸化物を用いた加熱重合により作製されたレジンブロックであること。また、そこから削り出されたクラウンのこと。
以上がCADCAM冠の定義になります。
コンポジットレジンが、下の画像のような圧縮されたブロックになり、そこから削り出されたというイメージですね。
レジンではあるのですが、フィラーが組成の大部分を占めます。
一部保険適用されたCADCAM冠ですが、フィラーはくっつきにくい材質なので、CADCAM冠は難接着材料と言われているのです。
CADCAM冠に適した形成
こちらは、愛知学院大学歯学部の富士谷教授のCADCAM冠に適した形成についてです。
ポイントは以下の通りです。
- アンダーカットがないように形成を行う。
- マージンはヘビーシャンファー、もしくはディープショルダーで形成
- 咬合面クリアランスは1.5mm以上
- 隅角部はシャープにせずに丸く形成
- 軸面の厚みは1.0mm以上
- 歯肉縁上にマージンを設定
まずは、セラミックス形成用のバーを使って土台である支台歯をしっかり形成することが大事です。
印象採得のコツ
- アルギン酸での印象採得の場合
経時的な変形を起こしやすいので、すぐに石膏を流し模型を製作することが重要です。
アルジネートは比較的コストが低いのが利点ですが、最近では通販でも激安なものが出回っていますので、こちらも見てみてください。
- シリコーン印象材での印象採得
シリコーン印象材は経時的な変形は起こしにくいので、非常に優れた印象材です。
歯肉縁下のマージンの場合はちぎれにくいシリコーン印象材を使うと良いでしょう。
CADCAM冠は機械が削るので、技工士さんが削るものではないので、精度は落ちます。
そして、縁下にマージンがある場合は、より精度の高い印象をする必要があります。
シリコーン印象材は比較的コストが高いのが欠点ですが、最近では通販でも激安なものが出回っていますので、こちらも見てみてください。
ドクターシリコーンはBSAサクライさんが出している価格破壊のシリコーン印象材です。
インジェクションとトレー材を連合印象で使う製品です。
「シリコーン印象材は高いから嫌煙をしていた」という方は、シリコーン印象材の精度をこの価格で試してください。
内面処理・前処理の重要性:サンドブラスト、歯面清掃、シラン処理
CADCAM冠の脱離や破折を防ぐための内面処理・前処理には3つ重要なポイントがあります。
- CADCAM冠の表面積を広げ機械的嵌合力を高めるために、また、試適後の唾液の汚染を除去するためにサンドブラストが必須
- 支台歯の唾液やその他接着阻害要因を除去するために、支台歯へのアルミナでの清掃が必須
- CADCAM冠は重合率が高いので、フィラーとセメントをくっつけるためのシラン処理が必須
こちらも、愛知学院大学歯学部の富士谷教授のCADCAM冠の前処理の推奨方法についてです。
また、CADCAM冠が脱離するケースでは、セメントが支台歯側にくっついてるか、クラウン側にくっついているかで対策が決まってきますので、そちらも紹介していきます。
セメントが支台歯側にくっついているのであれば、クラウンへの前処理を見直します。
セメントがクラウン側にくっついているのであれば、支台歯への前処理を見直します。
サンドブラスト(セメントが支台歯側について脱離するケースの対策)
CADCAM冠のサンドブラスト処理は、技工所サイドでやってもらっているという先生は多いかと思います。
サンドブラストは表面積を400%も広げることができるため、バーで荒らす以上に合着力を上げる効果があると言われています。
しかし、CADCAM冠を試適したあとにも、サンドブラストをする必要があります。
試適したあとには、唾液によって内面が汚染されます。
リン酸処理をしただけだと、唾液の汚染は除去しきれないのです。
サンドブラストによって、改めて唾液を吹き飛ばし、新鮮な接着面を露出させることが重要なのです。
特に最近では、チェアサイドで使えるサンドブラスターも出ています。
チェアサイドで使える簡易式のサンドブラスターは、ピンからキリまであります。
通販で買えるような、下記のような簡易式のものから、口腔内でも使える認可を得ているモリムラさんのものなどです。
幅広く出ているので予算に相談して選んでみてください。
モリムラさんのマイクロエッチャー2Aは口腔内でも使える認可がある(先端ノズルは滅菌も可能)ため、前装冠のリペアにも重宝しますので、予算に余裕があればおすすめです。
支台歯の清掃(セメントがクラウン側について脱離するケースの対策)
支台歯の清掃は、水洗やエッチングしている先生も多いかと思います。
もしそれでも、セメントがクラウン側について脱離する場合は、上記のサンドブラスターに付属しているアルミナを使います。
どう使うか、というと、アルミナの粉を水に溶かします。
そちらにブラシを入れて、アルミナの粉を付けて、そちらで支台歯を清掃してみてください。
より強く、機械的に接着阻害要因を除去することが可能です。
シラン処理(セメントが支台歯側について脱離するケースの対策)
CADCAM冠は従来型のハイブリッドレジンと違って、ブロックに重合する過程で、レジン成分がなくなってしまうのです。
レジンはレジン同士でくっつきますが、レジン成分が少ないので、前処理が必要なのです。
コンポジットレジン(フィラーとレジンで成り立つ素材)が元の素材ではあるのですが、CADCAM冠はほぼフィラーしか残っていない素材なのです。
なので、フィラーとの接着のためにシラン処理が必要になってきます。
前処理については、最近では、色々な素材に接着するボンディング材も増えてきています。
その中でも、スコッチボンドはシランカップリング剤が1液の中に配合されている、全ての被着体にくっつく唯一のボンディング剤です。
支台歯もレジンやメタルや歯質が混じっていても、塗り分け要らずなので、操作性が抜群です。是非便利さを体感してみてください。
セメント選び
補綴物をつけるセメントには、グラスアイオノマーセメントとレジンセメントが大きく2つ選択肢として挙げられると思います。
セメント選びはレジンセメントが推奨されています。
CADCAM冠は技工士さんが作るものではないので、適合精度はそこまで高くないです。
また、メタルよりも補綴物がたわみやすいので、たわむことでセメントの崩壊を招きやすいです。
なので、強度の高いレジンセメントを使うことが推奨されています。
接着力を求めたい先生は、プライマー併用型のレジンセメントを使うと、自己接着型のものより接着力が高いので、安心でしょう。
形成に自信のある先生には、セラミックプライマーをCADCAM冠に塗るだけの自己接着型のレジンセメントが操作性がよく、使いやすいでしょう。
CADCAM冠の需要は増えてきている。
CADCAM冠は導入当初は脱離率が10%も平均であり、現在でも脱離で悩む先生は多いです。
他方で、患者さんからも白い歯にしたいという要望が増えてきています。
また、メタルフリーという観点からも、生体親和性が高く、需要は増えてきているといっても良いでしょう。
患者さんからの要望にお答えできるように、より喜んでもらえるために、CADCAM冠の接着システムの参考にしてみてください。
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