生成AIのゲームへの応用のトレンドとマーケティングのリアル
Palworldと生成AI?
最近、Palworldが世界を席巻しており、Twitterでも毎日その面白さ、ベンチャーマインド、そしてキャラクターのIPの問題などに触れる機会が増えました。
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ちなみに、Palworldはたった4日で公式に600万本以上の販売を達成しています。
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Steam DBチャートによると、PalworldはDota 2やLost Arkを上回り、最もプレイされたゲームのチャートで首位に立っています。
Palworldは1.8万人以上の同時プレイヤー数を持つCounter-Strike 2と、320万人以上の同時プレイヤー数を持つPUBG: Battlegroundsに続く3番目の位置にあり、恐ろしい快挙です。
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IPの問題というのは、世界の誰でもPalworldを見たら、これはポ〇〇ンでは?と思うことは言うまでもなく、このデザインが物議を醸しているということです。
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Maybe they're brothers? #Palworld #Pokemon #Lycanroc model from SV. pic.twitter.com/KnGSozfJGQ
— byo (@byofrog) January 21, 2024
もちろん、IPの問題はIPホルダーとの問題になるので、第三者がとやかくいうことではないかもしれません。
他方で、いわゆるMOD(ゲームデータのユーザーによる勝手なmodificationや改造)として、ポケモンのキャラクターにPalworldのキャラクターに差し替えるインフルエンサーも出てきて、めちゃくちゃになってきています。
Palworld Pokemon video is LIVE! GO NOW before its taken down and Nintendo take my family hostage https://t.co/Mmk5vo1ZVf
— Toasted (@ToastedShoes) January 23, 2024
(動画は権利者による削除済み)
モデルそのものやデザインそのものに対して、生成AIを活用しているのでは?という意見もあることから、生成AIがゲームに与える影響の大きさも垣間見えます。
生成AIとゲームの可能性
ちなみに、2023年には、ゲーム市場における生成AIの価値は1,137百万ドルに達しました。2023年から2032年まで、この市場は最も高い年間成長率(CAGR)23.3%を記録すると推定されており、2032年までに7,105百万ドルに達すると予測されています。
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セグメントは画像の強化、レベルの生成、ゲーム内の複雑さのバランス、シナリオとストーリー、ノンプレイヤーキャラクターとなっています。
ChatGPT、Electronic Arts(EA)、Apex Game Tools、Procedural Arts、AI Dungeon、IBM、Kata.ai、Pyka、Baidu、Charisma.ai、Latitude.ioなどが主要なプレイヤーとしてリストされており、ファウンデーションモデルから独自のリアルタイムAIまで、様々です。
生成AIは既にプリプロダクションを向上させるためにコンテンツの企画と開発プロセスを効率化しているとされており、AIはゲーム開発の半分以上を5〜10年以内に管理すると業界のリーダーたちは予測しているらしいです。
![](https://kevurugames.com/wp-content/images/noimage.png)
シンプルなインディーズゲームクラスなら自動化もできるかもしれませんが、ゲーム開発のコンポーネントは非常に多いため、まだまだプリプロダクションレベルなのも頷けます。
![](https://d24ovhgu8s7341.cloudfront.net/uploads/post/social_media_image/2914/Artboard_60_copy_3.png)
特に、品質保証とプレイヤーフィードバック、倫理的および道徳的な決定など、AIが及ばない側面もあるため、活用には注意が求められることは言うまでもありませんね。
可能性の意味で言えば、動的なゲーム世界を作成し、プレイヤーに独自のコンテンツを生成する力を与えることで、ゲームデザインと開発に新しい時代をもたらす未来が予測されています。
- 特定の指示を汲み取ったワールドビルディングの合理化
- ゲーム内アイテムなどのユーザー生成コンテンツ(UGC)の民主化
- 動的な応答を可能とするNPCの解放
- 選択肢を広げるパーソナライズの体験
- 世界トップクラスのプレイヤーレベルの洗練された敵
いずれも、自由度を広げすぎるとゲームのバランスや世界観を崩すこと、また契約や法的な問題を生む可能性があるため、調整がかなり難しそうな印象はあります。
生成AIゲームのスタートアップ
他方で、ベンチャーキャピタルも積極的に注目しており、いくつかの生成AI×ゲームのスタートアップがユースケースを作り出していっています。
PitchBookのレポートによると、2022年にはゲーム産業のVC取引が減少したが、2022年の全体的な市場は4倍に増加しています。また、AI技術の導入により、ゲーム開発のコストを下げる可能性があり、ローコード開発ツールの需要も増加しています。
ここでも、生成AIはゲーム開発者を置き換えるためではなく、助手、ライター、チューター、デバッガー、スケッチアーティストなどの一部の仕事をサポートすることに焦点が当てられていますが、とにかく生産性の向上に取り組む会社がちょっと前に仕込みを終えてシリーズA~Bという感じですね。
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A16Z gaming fundが公開しているカオスマップでは、57のスタートアップが含まれています。
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中でも有名なものはCharacter.aiでしょうか。これも著作権は大丈夫なの?という感じはしますが、現在は割りとカウンセラーなどの性格のボットも人気みたいで、倫理おいておいてやったもん勝ちみたいな印象もあり、なんともいえません。
いくつかスタートアップを見てみましょう。
Azra Gamesは生成 AI を活用して、コンバット キット ジェネレーター、キャラクター シート ジェネレーター、さらには 2D → 3D オブジェクト ジェネレーター パイプラインを構築しました。彼らはまた、生成 AI を利用して、ゲーム内でよりリッチでパーソナライズされた対話エンジンをどのように作成できるかについても研究しています。
Anything.World は、3Dコンテンツの作成のためのプラットフォームです。
Remagine Venturesのポートフォリオ企業であるEcho3Dは、開発者と協力してクラウド上で3Dアセットを管理し、コンテンツをVR、PC、モバイルなどのプラットフォーム全体でスムーズに機能させ、モデルレベルの分析を行います。
Endless Adventuresは、Steam Early Accessで2024年初頭にリリース予定のAdventure Forgeを提供します。これは、ダンジョンクローラーやビジュアルノベルなど、プレイヤーが独自のオリジナルゲームを作成するために使用できるノーコードツールセットです。
Titan AIは、Berkeley SkyDeckをリードとするプリシードファンディングで50万ドル以上を調達した新しいモバイルゲームスタジオです。AIを使用して2Dグラフィックを作成し、3Dモデルと組み合わせる独自の技術を使用しています。また、AIをトレーニングして、簡単、中級、難しいというレベルセグメントを構築することも行っています。
modl.aiは、modl:createツールは、レベル生成を自動化することで、ゲーム開発者が没入型のプレイヤーエクスペリエンスを開発し、プレイヤーの行動を理解することを可能にします。
Utopos Gamesは、プレイヤーが世界中の他のプレイヤーによって訓練されたロボットのチームを集めて戦うオンラインマッチゲームを提供しています。
NPCxは、ビデオゲーム、拡張現実、および仮想現実などのインタラクティブなエンターテイメント向けの人間らしいNPCを構築しています。
Perfection42は、CGIのレンダリング時間を短縮するAIベースのゲーム開発プラットフォームを開発しています。
![](https://www.startus-insights.com/wp-content/uploads/2021/11/AI-Games-Startups-Entertainment-SharedImg-StartUs-Insights-noresize.png)
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![](https://cdn.prod.website-files.com/5ef788f07804fb7d78a4127a/6204e5bc6ba766cd1b4a08fe_Engati-%20AI%20in%20gaming.jpg)
ゲームのマーケティングの現実
また、どんなに生成AIを活用しようとも、ユーザーの望むゲームであることや、マーケティングそのものが適切ではない限りは、結局はゲームとして売れることはないのでしょう。Palworldはその点が傑出しているのでしょうね。
ゲームの配信プラットフォームのSteamのゲームセールについて調べてみると、ある月には約850本のゲームが発売され、82%が最低賃金すら稼げない結果となっています。
Steam上で低成績のゲームのほとんどは、アセットの流用に頼ったり、独創性に欠けたりしており、プレイヤーの関心を引くことができません。そのため、プレイヤーに独自の体験を提供する高品質なゲームの開発に焦点を当てることが重要とのことです。
ちなみに、Steamのトップ100ゲームのジャンルを分析すると、サバイバルやクラフトゲーム、シューティングゲーム、ビジュアルノベルが好成績を収めている傾向が見られます。
リーガル的なリスクを折り込みながら、ゲームの売れ線を分析して取り込みつつ、独自性を出しながらも、インフルエンサーやストリーマーとの連携を模索する必要がある、まさに総合格闘技のようなビジネスですね。
ちなみに、Steamでは、生成AIを使用したほとんどのゲームのリリースを許可することになっています。開発者がSteamに提出する際に記入するContent SurveyにAIの役割を記述し、使用方法を分類するセクションがあるようです。
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1minusのジョナサンがゲームのローンチまでに重要な論点をまとめていますが、これが非常に面白いです。
- ゲームの開発とプレイに興奮しているのはなぜですか?
- なぜ他の人も興奮する必要があるのでしょうか?
- あなたのゲームのユニークな機能は何ですか?
(1)数枚のスライドのコンセプトから初めて、(2)USPを定義し、(3)ペルソナを明確にし、(4)KPIを定義し、
- 予約注文数
- ウィッシュリストの数
- ニュースレターの購読
- 次のリリースについて話しているメッセージ/コメントの数
- ソーシャルメディアのフォロワー…
(5)コンテンツ戦略とコミュニティを磨き込む、(6)トレーラーやインフルエンサーとPRをかます、と言う感じですが、結構Web3系のローンチ戦略ににているというか、コミュニティ重視のサービスだとこうなるのかもしれません。
Generative AIの導入により、小規模な「マイクロスタジオ」がより多くの商業ゲームを制作できるようになると予測もあります。下記のようなカジュアルゲームはスタジオレベルではないですが、ビジュアライズの方向性次第で、動的な面白いゲームはまだまだ出てきそうですね。
アイコン同士を錬金させて新しいアイコンを作りながら地球を作るAIゲーム、ビジュアライズするだけでかなり楽しい。掛け算系なら応用が効きそうですね。https://t.co/ghEzD5uV8S pic.twitter.com/coRucJtiTl
— Itaru Tomita / 冨田到 (@ItaruTomita9779) January 18, 2024
他方で、ゲームのUSPの企画×生成AIのテックスタック×ワールドワイドなマーケティングセンスのチームアップがないと、まだまだ難しいかもしれません。逆にそんなスーパーチームがいれば、小規模最強のコンテンツ集団になりそうです。
もしくは生成AIを活用する場合は、インフラレイヤーとして、ゲームの生産の便利なコンポーネントとして、貢献することが現実的なのかもしれません。
参考文献
この記事はDeskrexでリサーチした結果を参考に書いています。無料トライアルで使いたい方はこちら → https://lp.deskrex.ai/
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