【書評】スープで、いきます:スープストックのこだわりビジネスモデリング

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【書評】スープで、いきます:スープストックのこだわりビジネスモデリング

こんにちは、外資系セールスから転職→現在はベンチャー企業にて起業家を支援している冨田到(@ItaruTomita9779)です。

さて、突然ですが、皆さんは、スープストックトーキョーというスープ専門店をご存知でしょうか。

黒と白のロゴが印象的で、おいしいスープが楽しめるお店ですが、実はスマイルズの遠山正道さんという方が三菱商事の社内ベンチャーとして立ち上げられたブランドなのです。

今回は、そのスープストックトーキョーの成り立ちとビジネスモデルをどのように立ち上げたのかを、赤裸々に綴っている「スープで、いきます」という本を書評したいと思います。

昨今、ベンチャー・スタートアップに人材が流動している中、事業を立ち上げたり、起業をしたり、「自分のやりたいことにこだわる方」には、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

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商品の説明

東京ボルシチ、オマール海老とわたり蟹のスープ、酸辛湯/《ビジネス経験ナシ、食は素人》の三菱商事社員が、会社を辞めずに社長になり「世界一」を目指すまでの、苦悩と感動、たまに涙の物語。

内容

「スープで腹一杯になるのか」、「夏はどうなんだ」、「価格が高すぎる」、猛烈な反対にあいながらスープ専門店を立ち上げ、三菱商事初の“社内ベンチャー制度”で会社を作り、サラリーマンのまま、社長になった―。一社員のひらめきから始まった世界一のスープ・プロジェクト。

著者について

1962年東京都出身。慶應義塾大学卒業後、三菱商事に入社。97年に日本ケンタッキーに出向後、三菱商事初となる社内ベンチャーとして、スープ専門店「Soup Stock Tokyo」を立ち上げ、99年第1号店を開店。2000年に三菱商事との共同出資で(株)スマイルズを設立し、代表取締役社長になる。05年同会長へ就任。

スープストックトーキョーという事業と「人」

前述のとおり、スープストックトーキョーという会社は、遠山正道さんが三菱商事において、社内ベンチャーとして立ち上げたものが発端です。

会社さんによっては、新規事業部を新設したり、社内新規事業を制度化されていたりするところも最近は増えてきています。

ただ、遠山さんの時代においては、社長への直談判を通して、事業立ち上げをするようなことが書かれており、良い意味でその立ち上げの経緯はキレイなものではないように思えます。

そのような筋道など無い、スープストックトーキョーの事業立ち上げにあたっては、遠山さんという「人」が、社会に対して、問題を提起したからこそだということなのです。

詳細はぜひ本書を読んでいただきたいのですが、遠山さんは個展を開くほど、芸術や個性へのこだわりをお持ちであり、「どうしてこうなっちゃうの?」という問題意識をビジネスに社会にも持たれているのです。

その上、遠山さんは三菱商事の先輩方の学びから、特に「行動に起こす」ことを大事にされており、下記の画像のような企画書(本書に22Pほどの企画書が載っています)を起こすほどでした。

社内新規事業においては、社内の経済合理性と政治性が強く働きますので、「行動する・結果を出す・資源を引き出す」ということが大事になります。

会社側が承認しないことに対する課題はもちろん会社にもありますが、部長や役員にも納得いただけるクラスの提案や活動を持っていくことも、本書を読んで学ぶことが出来ます。

「事業とヒト」というものは切っても切れないと思うわけですが、スープストックトーキョーにおいても、事業の思いの種である「こだわり」が、そのビジネスモデルのキーワードのように思えます。

上記の企画書は、noteでもバズりそうなレベルで、赤裸々です。メニューからオペレーションまで、全てにこだわりが詰まっており、なんとも面白いですね。

ターゲットは設定しない

「スープで、いきます」では、「ターゲットは設定しなかった」という一文があります。

「スープというものは、〇歳〜百歳まで、男女・国籍・貧富・宗教を問わない」「自分へのこだわりは強いが、相手を選ばず差別はしない」

通例では、ペルソナを設定して、「〜〜な特徴を持つ〜〜〜な人」をターゲットにすることが、商品企画では多いので、少し違和感を持つ方もいるのではないでしょうか。

たしかに、スタートアップの行動パターンの一つに、リーンスタートアップがあります。

リーンスタートアップにおいては、顧客の課題を発見し、それを解決しうるMVP(≒プロトタイプ)を作り、それをまた顧客に聞いて改善するサイクルを繰り返し、失敗を減らします。

これは、顧客に対するインタビューをしっかり行い、最初に解決すべき課題を発見し、その課題を持つものをターゲットとして、設定することになります。

このような手法は、今一度、問い直すべきなのでしょうか。

ただ、遠山さんはこうも言っています。

「最初に、自分たちから世の中に球を投げる。それに共感してもらえれば、強い関係性ができる。」・・・「またマーケットありきでスタートすると、だめなときにマーケットに責任転嫁してしまいかねません。」・・・「しかし、反省点もあります。こちらから球を投げる、お客様を差別しない、ということが「お客様不在」になりかねないところです。」

つまり、自身の内発的な思い、すなわち「こだわり」を持った上で、マーケットに向き合うことが大事ということなのではないでしょうか。

マーケットに任せすぎず、自分でも意志を持つ、そしてマーケットと調整していく、ということです。

このマーケットの調整については、遠山さんがスープストックの苦しい時期を綴った「炎の七十日間」という章は必見です。

こうして書くとおとなしく見えますが、朝会の実態は、緊張感が張り詰め、壮絶な意見が飛び交う、まさに”血と汗にまみれた”ものでした。会議というより、喧嘩のようになってしまうこともありました。・・・売上不振も、猛暑も、異物も、人手不足も、全てが待ったなし。非常事態が連続して起きた七十日。

また、遠山さんご自身も、ケンタッキーでの経験から、「女性の行ける店がないことの問題」を意識していたり、「奥様の健康意識」に対する話であったり、日々の暮らしの中で見つける「こうなったら良い」というものを大事にされていたようです。

実際に、オマール海老とわたり蟹のスープというメニューは、海外の業者と日本の製造業者とかなりこだわって、食材選定から製造プロセスを検討しているシーンがあります。

「自分がほしいもの」、「知り合いに必要とされるもの」をこだわった上で、事業に輪郭をつけていく、そんなビジネスの創り方が非常に勉強になりますね。

こだわりを大事にするビジネスモデリング

起業家の行動原則の研究であるエフェクチュエーションでも、「自分の持っている資源」(≒こだわり)から始めることの重要性が明かされています。

自分の持ちうる専門性や思いや人脈などを起点に、プロダクト・アウトとマーケット・インを両使いするのです。

ただ、新規事業開発を支援していると、会社の存続のために新規事業を創るということも多いです。

これは、すなわち「顧客が不在」になるということの危険性を秘めています。

実際に、そのようなケースだと、担当者が市場にビジネスの種をとにかく探すために必死になるのですが、それだけだと、本人も幸せになりません。

ない課題を見つけるために、奮闘するだけではなく、当人がしっかりこだわりを持ち、そのこだわりに向き合うビジネスモデリングをが大事になるのではないでしょうか。

スープストックトーキョーは、事業のコアのビジョンだけではなく、その製造方法や商品開発や、組織づくりにも、遠山さんのこだわりが反映されていることが、本書から学べます。

ぜひ、遠山さんがスープストックトーキョーを創った物語から、そのエッセンスとこだわりを味わってみてください。

ビジネス評論
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